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■ 神経研究の進歩 8月号

神経研究の進歩 8月号は「頭頂葉の新しい機能地図」という特集です。目次を見ると、酒田先生の系列の方がどっさり。
おお! Galletti et.al.のExperimental Brain Research '03 "Role of the medial parieto-occipital cortex in the control of reaching and grasping movements."が翻訳されています(「内側頭頂後頭皮質の到達運動と把握運動制御における役割」Galletti C. 他著、 村田 哲 訳」)。7/14にCorreggioさんが教えてくださったときに読んでみたのですが、やっぱV 6/V 6A = PO重要ですな。Gallettiの考えでいけば、optic ataxiaはretonotipicalな座標から運動空間座標への変換過程の障害ということで、たしかに後述のBuxbaumの考えと一致するようです。場所的にも頭頂葉と後頭葉の接合部だし、それっぽい感じもする。とはいえ、頭頂葉の相同がhumanとnonhuman primateとでわけわからないので即断できないわけですが。それにしても、HumanのSPG=nonhuman primateのIFGであるとしたら、humanのIFG(+STG=hemineglectの原因領域)はnonhuman primateのどこに相当するんだろうか。
それから、「頭頂葉病変による視覚性運動失調」石原 健司・他著。7/14のご隠居のコメントにあったataxie optiqueとoptische ataxieの区別に関して書かれています。なるほど、まとめ:

  • Balint('09)が見出したのはoptische ataxie(注視した対象物をつかめない)で、Garcin('67)が見出したのはataxie optique(AO:周辺視野にある対象物をつかめない)で別物。
  • RondotらによるAOの発現機序('77):空間情報が運動出力系からdisconnectされる。後頭葉から運動野までのあいだでの半球間を渡る交連線維が傷害されると右手で右視野、または左手で左視野への対象物を掴むことが難しくなる。同側の後頭葉から運動野までの結合が傷害されると右手で左視野、または左手で右視野への対象物を掴むことが難しくなる。
  • Buxbaumらによる発現機序('97):網膜上の座標から到達運動に必要とされる身体の各部位(方、腕、手)中心座標への変換が障害される。
  • 平山らによる発現機序('82):optische ataxieでは上丘->pulvinar->angular gyrusの経路が傷害され、ataxie optiqueではoccipital->->angular gyrusの経路が傷害されている、と提案。
  • 著者の症例からの発言機序('04):左頭頂葉の病変により、左occipital->左angular gyrusの経路と左右のangular gyrus間の結合とに障害が起こる。これによって、左手から右視野の対象物をうまくつかめなくなる。右手からは左右どちらの視野も対象物もうまくつかめなくなる。
「英語圏の論文では両者を厳密に区別しないで記載されたものが散見されるが、対象を注視した状態であるか、周辺視の状態であるかは、重要な相違点である。」と書かれています。これは7/14のVighetto and Milner論文に関してご隠居が指摘されていたことですな。ちなみにVighetto and Milner論文ではこの患者さんたちが注視しているときには対象物を掴むのにほとんど障害はなかったらしいことを彼ら(Vighettoら)の前報
を引いて主張します。それならばそれはBalint症候群ではないのではないか、と思うわけですが、やはりこのへんがあまりクリアーでないのですな。


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