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■ Neuron

Prospective and Retrospective Memory Coding in the Hippocampus
Shapiro @ Mount Sinai School of Medicine。
さて、アブストだけ読んで暴言しよう。
ラットの海馬のplace cellがprospective codingとretrospective codingをしていて、task performanceにも関わっている、というわけだが、問題はこれをepisodic memoryと絡めようとしているところだ。Wendy Suzukiはこの論文のpreviewで
Episodic Memory Signals in the Rat Hippocampus
この神経活動が"the sequence of past, present, and future events that make up an episode"を反映してるなんて言ってるわけだが、animal studyにおけるepisodic-like memoryの定義の問題をずるく回避しようとしているんじゃないのか。
Tulvingが言ったように、episodic memoryはmental time travelであって、"concsious recollection"を伴っていなければならない。このため、意識があるかどうかわからない動物では、Claytonがscrub jayを使ったNature論文'98のようにwhat-when-where全てを必要としたタスクを使って"episodic-LIKE memory"と言わなければならない。Shapiroはちゃんとclaytonに言及してさらにEichenbaumの未発表データに依拠している。*1 しかしWendyはClaytonとの共著論文もあるくせにこの辺に触れようとしない。ようするに言いたいことは、「ラットでepisodic-likeのニューロンコーディングをやるなら、まずラットがepisodic-like memoryを持ってることを証明しろ」ということ。まだ証明されていないんだから。いや、アブストとreferenceだけ読んで書いてるんだけれど。
だいたいprospective codingとretrospective codingなんてのは霊長類ですでにやられていて、側頭連合野にも前頭前野にもそういうニューロンがあることも知られている。霊長類が内側側頭葉記憶システムと前頭前野とのインタラクションでやってるとわかっていることを、げっ歯類の海馬で研究しようとするからにはそうでなければわからないことをやる必要があるはず。その意味で注にあるDay and Morrisは薬理をやることでその水準をぎりぎり保ったと思う。
海馬がepisodicだろう、なんてことはhumanの研究から推測できることなわけで、それをいいかげんな形で論文にされては困るということ。


*1:ちなみにRG Morrisは最近Natureにwhat-whereが必要な対連合記憶課題をラットにやらせていて、episodic-likeを標榜しているが、タイトルにはそうは書けていない。 http://dx.doi.org/10.1038/nature01769


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