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■ 大泉匡史さん「意識の統合情報理論」セミナーまとめ(1/5)

(全5回分の記事をつなげてPDF化しました。まとめて読むときはこちらを使うことをお勧めします:IIT20161115.pdf)

理研BSIの大泉匡史さんが近畿大学で意識の統合情報理論について7.5時間語り尽くすセミナーをやるというニュースを知って参加してきた。

これまで私は、意識の統合情報理論(Information Integration Theory of Consciousness)についてブログでいろいろと書いてきた。ブログの「トノーニの意識の統合情報理論」カテゴリ参照。でもまあ、いつも手を動かしてモデルの挙動を知るとかそういうレベルで理論を理解しているわけではないので、なんとか時間を取ってこの理論についてちゃんと理解した上で、賛成するなり反対するなり意見を表明できるようにしたいと考えていた。

今回のセミナーは、統合情報理論の最新版をトノーニラボで作ってきた大泉匡史さん本人が、7.5時間かけて充分に詳細を説明しようという趣旨であるようなので、これはいい機会とあらかじめ論文を読み込んでセミナーに臨んだ。こんなかんじ:


さてさてそれでこの記事では、参加して色々考えたことをまとめておきたいと思う。想定読者は大泉さん、土谷さん、金井さん、今年のASCONEの参加者のみなさん、そしてIITについて読んだがことあって興味持ってる人。長いので何回分かに分ける。

そういうわけで、IITとはなんぞやとかそういう初歩的なことはここでは書かない。概要は大泉さん本人による日本語の解説記事1(Clinical Neuroscience)および解説記事2(LISA)を読むのがよいかと。さらに詳しく知りたければ「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」 トノーニ & マッスィミーニを読んで、Scholarpediaの記事という順番で。

関連する論文は主に三つ。

  • 現在の最新バージョンのIIT3.0の原著論文はPLoS Comput Biol 2014。以降「IIT3論文」と呼ぶ。
  • それ以降に情報幾何を使ってIITを見直した論文がarXiv 2015で、以降「情報幾何論文」と呼ぶ。
  • それから大泉さんがトノーニ研行く前からやってたmismatched decodingに基づいた論文(+ECoGデータ)がPLoS Comput Biol 2014。以降「デコーディング論文」と呼ぶ。

当日のセミナーは4部構成で、

  • 統合情報理論とは何か。Axiomsとpostulatesを説明。
  • Level of consciousnessについて。主にIIT2.0(Balduzzi & Tononi, 2008)を元にしたΦの定式化。
  • Quality of consciousnessについて。IIT3論文におけるconstellation / qualia spaceについて。
  • IITの実験による検証。デコーディング論文および未発表論文とヒトECoG論文 biorxiv 2016

となっていた。以降はこのセミナーの内容に沿いながらいろいろコメントしてゆく。以下IIT3論文で読んだことおよび大泉さんによる説明をまとめたうえで、吉田によるコメント部分は煩雑にならない程度に明示しながら書いてゆく。次回はこちら


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