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■ 研究関連メモ20140316

高次脳機能障害者の世界~私の思うリハビリや暮らしのこと 山田 規畝子を読んでた。「壊れた脳 生存する知」は体験談的な記述だったけど、こちらの本では半側空間無視における経験についての記述(p.85-93)がわかりやすい。

(左は存在しないという自覚を持っているというよりは)「これまで私にとって左側が存在しなかったがゆえにやってしまった失敗とか…を通して、実はそうしたことの「理由」として、間接的に、これは私にはそもそも左側が存在しないがゆえの失敗なのだ、指摘なのだという結論を出している」

「もし左側があるのならこんな失敗や不都合はあるはずがないという思考方法で、それはある程度以上、意識して考えようとすればそういうことかなと考えられるということで、肩の力を抜いてしまうとすぐに消えてしまう」

「たとえば左の壁際を歩いてみなさいと言われると、左のことがわからない人にとっては、わかっていない部分で何かしてくれと言われるのに等しく、それがものすごく怖くなるのです。…そこへ寄り過ぎると壁にぶつかるという予想もできる…何もわかっていないから右へ寄っていくのではないのです。」

もちろん、人によって経験はそれぞれ違っているだろうし、山田 規畝子氏の場合には脳内出血を三度経験していて、記憶障害や失認もあるとのことだ。

「それでも脳は学習する~高次脳機能障害者の世界を語る~」 これも参考になった。


以前失語症についての一般書を読んでいて、失語症について「いきなり外国に行った状態」と例えていて(しかも英語ではなくドイツ語にしてあるところが絶妙だった)、音は聞こえているが意味は為さない、反応が遅れるから会話に加わることが億劫になる、など自分の意識経験と地続きで深く納得した。

ということとまさに同じような理由によって、自分がLAに行ったときには日本にいるときよりも「コミュ障」になってしまうという経験について書こうとしたのだけれども、「コミュ障」という言葉が政治的に正しくないので使わなかった。


"Learning to Read Improves the Structure of the Arcuate Fasciculus"つか、FAとの相関からAFの構造が「改善した」って言うのはどうよ?太けりゃいいってもんじゃないだろう?


狭いところに入り込むネコの話 と、ミニチュアの滑り台を滑ろうとする2歳児の話と視覚の腹側経路、背側経路くらいでなんかの三題噺を考えられないだろうか。


Front. Hum. Neurosci. 2014 Perceptual decision making: drift-diffusion model is equivalent to a Bayesian model

Front. Comput. Neurosci. 2012 "Perception and self-organized instability"自由エネルギー、カオス遍歴、自己組織化臨界現象と重要そうなの全部入ってるので読みたい。

脳の活動パターンがself-organized criticalityにあることを考えるならば、脳の活動パターンの場合の数は組み合わせ爆発などはしなくてずっと小さいはずなので、そういう範囲の中で探索したほうがいい。IITはそんな、元からあり得ないような状態を排除することにじつのところ機能しているのであって、拘束条件が緩すぎるのではないかと想像する。

つまり、N個のニューロンがあって、発火するかしないかの二つの状態だけがあったとして、ある時点での状態は2^Nあるということになっているけれども、それは過大評価であって、実際にはニューロン全体での発火頻度の周りでしか分布していないし、状態空間のなかで歴史に強く拘束されている。

つかそれって統計力学だよな。それはわかってる。


多次元レクチャーとかそのへんの準備をしていて、神経解剖学の基礎についてのよい図を探していたのだけれども、けっきょくのところ「カールソン神経科学テキスト 脳と行動」でほとんど用が足りることを知った。だいたい必要なところにカラーのわかりやすい図があって本当に素晴らしい。

たとえば基礎の基礎でdorsal-ventral, rostral-caudalの位置関係について、ヒトだと神経管が脊髄から脳に入ったところで曲がっているため直感に反した表現になるのだけれども、この教科書ではワニとヒトとを並べて両方表示している。なんかファニーでよい。

Heschl's gyriを表示している図も探していたのだが、外側溝を開かないと見えないので、脳解剖の実際の図とかになってしまってかえってわかりにくい。これもこの教科書だとoperculumを開いてinsulaとHeschl's gyriが見えるような図がある。

Rolandic operculumって言葉は知らなかった。「弁蓋」とかいうくらいなので、とにかくペロっとめくったらその下にべつの脳表が見えるような構造が弁蓋で、マカクのV1の表面と折りたたまれて盲点に対応する部分も弁蓋。

マカクのV1はややこしく折りたたまれているので弁蓋があるけれど、ヒトのV1はcalcarine sulcusに沿っているだけなので、たぶんヒトのV1周りにはopercular regionみたいな言い方するところはないんではないだろうか。要確認。


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