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■ Corbetta and Shulmanの「空間無視と注意ネットワーク」

Corbetta and ShulmanのAnnual Review of Neuroscience 2011 "Spatial Neglect and Attention Networks"は半側空間無視の脳内メカニズムについて注意の背側経路、腹側経路という面から、症状発現や機能イメージングなどの知見について整合的に説明しようとした最新の総説だ。そういうわけでとても重要なのだけど、これまでの論文からの差分で読んでたので、改めて精読していた。

Corbetta & Shulmanによる半側空間無視のメカニズムの説をまとめると「右の腹側注意システム(TPJ-STG-VFG)が損傷 -> non-spatialな要素(arousal)が右半球で落ちる -> 右の背側注意システム(IPS-FEF)の活動が低下 -> 左右の背側注意システムのバランス悪化 -> spatialな要素(眼球運動、注意、サリエンス)が右に偏る -> これが半側空間無視のコアの症状」という話だった。これによってなんで損傷部位は腹側システムなのに出てくる症状は背側システム的なのかということを説明している。

左に腹側システムはなくてそこは言語システムになっているという考え方。しかしKarnathのBrain 2011だと、左の腹側システム(STG)の損傷で失語症も半側空間無視も出る、というのを例の損傷の密度マップで出している。

このあいだから考えている、視覚、注意、言語の背側(action)・腹側(perception)経路説(ブログ20140119)について考えながら読んでいたのだけれど、視覚も言語もactionの要素とpereptionの要素がある。(言語だったら復唱と意味理解で分ける。) では注意にその二つはあるだろうか?

たぶん注意を半側空間無視だけで考えるのが正しくないのだろう。半側空間無視で出てくる抹消課題的なエゴセントリックなバイアスはアクションの側面を見ていると思うのだけれども、もっとパーセプションの側面(awarenessとして世界が半分ない、representationalな無視)とかを考えるだけでなくって、線分抹消課題が検出能は高くて良いのだけれどもperception的な部分とaction的な部分を独立して評価できていないのではないか。

独立して評価できるようなことを考える、までもなくてそういうことをしている人はたくさんいるだろうから、そのあたりをみたうえで、optic ataxiaとかあのへんと並べたうえで注意の背側、腹側とaction/perception説についてうまくつながらないか考えてみたらいいんではないだろうか。


このような議論の中で、脳の左右差はnonhuman animalのarousal系の左右差から始まっているかも、って話が出てきて、これは面白いと思った。ラットのノルアドレナリン系とか、チックでのemotional arousalとか。調べてみるか。

とりあえずマカクでVBMでasymmetry検出したものがないか調べてみたけど、見つからなかった。以前マカクの利き腕のことを調べたことを思い出した。「サルには利き腕ってあるの?」

この話が面白いと思ったのは、よく言われる「言語野の発達によって右が空間優位になって半側空間無視は右損傷によるものが多い」という説に対してもしかしたらもっと古いところから左右差が出てきているかもよ、ってことになるから。(収斂進化の可能性もと明記されている)

Cereb Cortex. 2011 Brain hemispheric structural efficiency and interconnectivity rightward asymmetry in human and nonhuman primates


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