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■ トノーニの「意識の統合情報理論」について:予習最終回延長戦

ジュリオ・トノーニが来るワークショップ "Measuring Consciousness - Theory and Experiments"は京大で3/25開催。参加費無料、申し込み手続き不要。いよいよ明日。


トノーニのBiol. Bull. 2008 "Consciousness as Integrated Information: a Provisional Manifesto"のおわりの方を読んでた。

「内側からの情報」の議論が重点的にしてあったので役に立ったが、まだ判然としていない。ここでの議論だと、unity of consciousnessは外からしか見えなくて、内側からはただそのような情報処理が為されているのが見えるだけとならないだろうか。つまり、そとから計算されるPhiとしてではなく、内側から現象学的な統一性と主観性とがどのようにして実現されると言えるのか。

それから、effective information(EI)というものを使うことの妥当性。ここでの議論されていることは、全体と部分、外側と内側、メアリーの部屋、汎心論、このへんの議論自体はEIでなくてpredictive codingでも成り立ちそうなのだが。

あと、ある時点での情報量をすべて記述すればそれで必要なものはすべてあるという立場にある。力学的な軌道と履歴は考えてなさそうだ。x, xの時間微分、…というふうに記述しているのかもしれないが。

ワーキングメモリーやエピソード記憶や注意やそういうものと意識とは同時ではない。必ず例外が出てくる。そこでIITが意識そのものだと言ってしまうことで他の認知科学的概念を使った説明よりもより強い主張をしているのだが、肝心のIITが計算できないので突っ込みにくい。

いや、いろいろ突っ込みたいところはあるのだが、なんか妙にうまく躱されてしまうかんじ。思いつきの羅列ではなくて、長い間議論で鍛えられてきた様子はある。

とはいえ、IITには行動がまったく入ってこないから、完全に受け身のセンサーネットワークでも、ただしくPhiが高くなるようなネットワークをデザインできれば(それは簡単ではないと明記されているが)、意識は持てると言うことになる。

active vision/enactive viewとざっくり整合性を付けてしまうならば、Phiが高くなるようなネットワークを形成する過程にsensorimotor contingencyは必須だが、あらゆる意識にオンラインで行動が必要ではないというふうに議論することは出来る。

.@alltbl ただし、デジカメみたいに平行に情報処理されているだけだとPhiは大きくならない。もっと基本的な回路、たとえばランダムな結合、スモールワールド、それらでふつうにPhiが大きくなるようなネットワークが作れるのか、このへんはやってみないと分からないと書いてあります。

なんかいろいろやってみたら、けっきょく行動を入れないとPhiが大きくなるネットワークを学習できなかった、という事態にもしなったとしたら、けっこう得心がいくかも。

小脳は並行処理だからPhiは大きくならない、大脳はPhiが大きくなる、という議論をしている。どのくらい定量的な議論なのかは、そのへん飛ばし読みしたので分からない。

.@alltbl オンラインで整合性を取ることが「いまの」意識に必要なことなのかどうかというのが論点で、これは自明でないけど、オンラインで整合性を取ることが「将来の」意識にとって必要だってのはけっこう自信がある、というかんじです。私は。

たぶんいまの話は、以前池上さんと話題になった、フィードバックとフィードフォワードの話に繋がる。やっぱ私はすぐにフィードフォワードの方に目が向く。

これのこと:フィードバックとフィードフォワードにおける時間 (池上さんとのやりとりを含む)(20111021)


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