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■ 日経サイエンス記事を翻訳しました

どうもご無沙汰してます。LAから帰ってきて、アムスに行ってまた帰ってきて、肩まで伸びた髪を切って、西海岸風ヒッピー系ナードから、元のだらっとしたかんじに戻ってきました。さていろんなことが溜まっている。
で向こうに行っているあいだにひとつしたのが、日経サイエンス記事の翻訳です。ちょうどいま発売中の日経サイエンス2010年8月号に出てます。
タイトルは"Uncanny sight in the Blind" 「盲人の不思議な視覚」 タイトルからわかるように、Blindsightの話です。元記事はScientific American 5月号のdeGelderの記事です。けっこうタイムラグが少ないなって印象があった。翻訳作業は4月だったけどそのときはまだ元記事が出版されてなかくてゲラ状態だったし。
deGelderはオランダの人で、Weiskrantzのところでやっていたaffective blindsightで有名。つまり、emotionに関連する視覚情報(怒った顔とか)はV1を通らずに直で扁桃体まで行くって話。
「英語で読む日経サイエンス」っていうページで私が訳した記事の訳文と元の文章が並べられてます。恥ずかしい。これをみて受験生が勉強に使ったりするのだろうか。このページの中にある例だと、"sidling"を「カニ歩きする」とかちょっとおちゃらけぎみに訳してみたりした。"it also does not make sense"は「意味をなさない」とか堅めに訳したら、編集部が「支離滅裂である」という表現に直してた。いま思うに「あり得ない」くらいでも良かったかも。
視覚障害の話題なので言葉の選び方とかえらく注意したのだけれど、元記事のタイトルは"Uncanny sight in the blind"。Uncannyって例の「不気味の谷」の「不気味」ですよ。どうなん、それ。タイトルの写真は目隠しをしている男性の写真なのだけれど、その目隠しに目が描いてあって、明らかに不気味な感じを意図している。辞書の定義では"seeming to have a supernatural character or origin: eerie, mysterious" なんで「不思議な」と処理しておきました。とりあえず間違ってはいないと思うんだけれど。
ともあれ、これが私にとって商業出版で翻訳をした初めての経験だったのでなかなか難儀しました。これまで科学系の翻訳書を読んでは、これはひどい訳だ、私がやればもっとうまくやるのに、と思ったものだけど、自分でやってみるとやっぱり難しい。いかにかみ砕いて表現するかとかそのへんはたぶん、労力と時間をかければもっとマシにすることはできる。しかしやっているときりがない。たぶんこねくりまわさずに、ざっと行くスピード感が必要なんだろうなあ。
大学生くらいの頃はアメリカの現代小説(アーヴィングとか)の訳書とか読んだりして翻訳に興味を持って、バベル・プレスの「翻訳の世界」(いま調べたら名前が変わってる!)とか購読したり、安西徹雄の翻訳英文法(新装版)読んだり、関連するワークブック(「英日翻訳トレーニング・マニュアル」)とかやってたことを思い出した。今回も、そういえば名詞句が主語の時は副詞句的に訳すんだ、とか思い出した。訳例で言えばこことか:"These discoveries spurred further systematic investigations of animals lacking the primary visual cortex. " 「これらの発見に刺激されて,第一次視覚野を失った動物を使った系統的な研究が進められた。」
だらだらしてきたんでこのあたりで。ではまた。次回はASCONEおよび生理研研究会について。
P.S. 「翻訳の世界」についてネットで調べてたら見つけた:『翻訳の世界』元編集長 今野哲男さんにきく


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