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■ Tononiのinformation integration theory of consciousness

Tononiのinformation integration theory of consciousnessってのに興味があるのだけれど、懐疑的だ。
Giulio Tononi "An information integration theory of consciousness" BMC Neuroscience 2004, 5:42
脳のglobalな特性をどう扱うかという問題意識はわたしは大好き。でも、Edelman-Tononi理論とかBaars-DehaneのGlobal Workspace Theoryとかには近づいてこなかった。こういう人たちの意識論というのはだいたいあまりに機能主義的だと思ってたし、この種の天下り的モデルは信用してない。
そしてなにより、Tononiが使っているeffective information、そしてΦ (integrated information)というものが理解できないので態度を保留してきた。
たとえば、この人の他のempiricalな論文ではこのmeasureが使われていない。たとえばあの睡眠時にTMSをしたScience論文だけれども、ERPの解析をしているだけだ。それどころか、タイトルがeffective connectivityであるにもかかわらず、effective connetivityすら計算されていない。(Effective connectivityじたいが「脳活動から計算された因果性のconnectivity」と「刺激による応答から見たconnectivity」と混ざって使われているようにも思える。)
Tononi自身がどっかで書いていたけれども、empiricalなstudyで定量的に取り出せる値ではないようだ。
また、Φ (integrated information)はeffective connetivityとかなり関連のある概念であるにもかかわらず、その関連が十分説明されていないようだ。
さいきんの論文では言及はされているようだが:Balduzzi D, Tononi G. "Integrated information in discrete dynamical systems: motivation and theoretical framework." PLoS Comput Biol. 2008 Jun 13;4(6):e1000091.
というわけで、このΦが、たとえば大規模同時記録とかからなら計算できるのかとかそういうのを知ったうえでつっこんでみたいと思う。これが宿題。
わたしは神経生理学者としては、意識について脳のglobalな特性からアプローチするネットワークモデルというものがたいがいトップダウン的なモデルだけになってしまって、empiricalなデータと接点を持たないという点にフラストレーションを抱えてきた。
F. Varelaはけっきょくそういうネットワークモデルを提出せずに、gamma-waveの解析だけを提示した。たんに氏の健康状態ゆえだったのかもしれないけど、それには意味があったように思える。
だから、わたしがしたいと思っていることは、ニューロンレベルでの現象ともっとマクロな現象とを繋ぐあたり、つまり、「多ニューロン同時期録でのCCGによるmonosynapticなconnectivity」から、「fMRIやEEGによる脳領野間でのeffective connectivity」までを繋ぐようなものに向かってきていて、それがわたしがこれからBMI/BCIに関わっていこうとするときのモチベーションだったりする。
Information Integration Theoryに関してはわるねこさんの「Information Integration Theory of Consciousness」にくわしい説明があり。


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