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■ 社会性の脳内メカニズム-信頼・評判・社会的交換理論

生理研研究会予習シリーズ、ですが、今年はあまりそちらに時間を割けそうにありません。神経科学者SNSのほうでの議論の盛り上がりに期待したいと思います。
とりあえず少し手がけた部分から。
出馬さんのNeuron論文について。
"Processing of Social and Monetary Rewards in the Human Striatum" Neuron, Vol 58, 284-294, 24 April 2008
論文コメント系ブログですと、vikingさんのところのエントリ「ヒト線条体における社会的および金銭的報酬の処理:線条体から見ると褒められるということはお金をもらうことに似ている」でとりあげられてます。
…なるほど、実験の手続き的には始めにmonetary reward experimentをやってからそのつぎにsocial reward experimentをやるという形にならざるを得ないので、それがなんか悪さをしないか、という気はしますね。
あとは、「二種類のrewardによるactivationが重なっている」というところからどのへんまで脳内メカニズムの議論ができるかどうかがカギでしょうか。その意味ではcaudate-mPFCのネットワークの意義付けみたいなことを理解しておく必要がありそうです。
そういうわけでもっと背景となる知識が私には必要なのですが、そういう意味ではvikingさんが採りあげていたレビュー
"Game theory and neural basis of social decision making" Lee D, Nat Neurosci. 2008 Apr;11(4):404-9
とかはよさそうですね。
あと、Neuron論文のイントロで採りあげられていた
King-Casas, B. et al. "Getting to know you: reputation and trust in a two-person economic exchange." Science 308, 78–83 (2005)
E. Fehr and U. Fischbacher, "The nature of human altruism," Nature 425 (2003), pp. 785–791
Wedekind and Milinski, 2000 C. Wedekind and M. Milinski, "Cooperation through image scoring in humans," Science 288 (2000), pp. 850–852
あたりを読んでみるといいかな、と考えてます。
ただ、それよりもっと手前で、Social exchange theory(社会的交換理論)というキーワードが出てきたのでそのへんをちらちら調べてます。要は経済学的な交換理論をHomansが社会学に持ち込んだのがはじまりで、でもってこのHomansという人がまたスキナリアンなのですね。
社会学自体ではどちらかというとそういった合理的選択理論の範疇にはいることよりは、そういうのが崩れるようなところの方が面白いのでしょうけど、脳科学の取り組みとしてははじめは合理的なところからはいるのが筋で、そういう意味でも神経経済学と同じようなルートをたどっているような印象を持ちました。
あと、ここ最近山岸俊男の本を読んでてちょっとかぶれ気味なので、ここでの信頼と安心とは、とかゲーム理論に当てはめて考えると、とかわかった口をききたくなる私。バイアスの問題、Payoffの問題でもっと定量的にものが言えそうに思うのですが。このへんはもうすこし本を読んでおきます。
あと、これとはべつに社会性の脳科学 --- 社会生物学 のあたりの議論も重要です。
社会生物学:最近の文献
Wikipedia:社会生物学
今回の研究会の講演者の人選ではあまりこっち方面に目を向けることができなかったのが反省材料でしょうか。
ではまた。


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