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■ 選択した行動の正解不正解をコードする前頭前野内側部 コメント応答2

松元まどかさんのコメントへの応答です。

まず、noveltyの議論ですが、私が言いたかったのは、Visual blockでの応答の話ではなくて、action-learning blockの方のmodulationについてでした。Lateral PFCでも、medial PFCでもまったく同一の条件で同様なmodulationがaction-learning blockで起こっているにもかかわらず、visual blockでのnoveltyに対する応答から外挿して、lateral PFCのほうのaction-learning blockの方のmodulationはnoveltyによるもので、medial PFCのほうはnegative feedbackによるものだ、というふうに説明しないといけないということに対してトリッキーだと言ったわけです。

つまり、元々の実験デザインがnegative feedbackとstimulus noveltyとを明示的に分離出来るようなパラダイムになっていないための苦肉の策なのだろうなあと考えたわけです。実際には不可能だけど仮想的な実験条件として、stimulus-novelty block(noveltyはあるが、negative feedbackにならない)ではlateral PFCだけがmodulateされて、action-learning block(negative feedbackになるが、noveltyはない)ではmedial PFCだけmodulateされたらいちばん良いわけでして。もっとも、こういうことは結果が出てみないとわからないものでして(身に覚えあり)、non-human primatesの実験の大変さを反映していると思います。

ひとつ思いつきですが、negative feedbackのほうでなくて、positive feedbackの方はどうなんでしたでしょうか。つまり、positve feedbackはstimulus noveltyでは説明できないので(ぎゃくにfamiliarity effectの強弱みたいな言い方は可能かもしれないけど)、こちらのmodulationがlateral PFCでも見られるのか、それともmedial PFCでのみ見られることか、これがわかるといいかもしれません。もし、後者なのでしたら、secondary reinforcerによるfeedbackはmedial PFCに特異的である証拠のひとつですので、「lateral PFCとmedial PFCとではmodulationの大きさはそんなに変わらないのに」というわたしの違和感をふっとばすことができます。ただ、もし論文に載っていないのでしたら(未発表でしたら)お答えくださる必要はございません。じつはsupplementary dataを全部は読んでおりませんので、もし見逃していたら教えていただきたい、ということです。

「今後、行動データでは分る事の出来ないことを、脳を調べることによって明らかにしていくこと」、これに期待したいと思います。松元健二さんへコメントでも書きましたが、ひとつは動機付けの問題かな、と思いますし、そのへんまで含んだ新しいパラダイムで、たとえばmuscimol injectionとかでmedial PFCの活動がほんとうに行動修正に使われていることを示せたら、これは脳を調べないとわからないことになるのではないかと思います。これからの研究の発展をお祈りしております。


エントリの方はつづきを書くと言ったまま尻切れトンボになってしまいましたが、RushworthのTrends in Cognitive Science 2004を読んできたので、これまでのmedial PFCの機能についての理解をまとめて、今回の論文がそれに対してどういうインパクトを持っているのか、みたいな議論をしようと思っているところでした。このへんについては来週あたりに取りかかりたいと思います。


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