« Gamma-band synchronization, Science '05 | 最新のページに戻る | Alva NoëとかEvan Thompsonとか。つづき。 »

■ Alva NoëとかEvan Thompsonとか。

arational agentさん、寄稿どうもありがとうございます。ぼちぼち読んでなにか応答できればと思っております。つづきの部分に関しても期待しておりますが、プレッシャーかけるつもりはございませんので、もし気が向いたら、というくらいのつもりで寄稿していただければ幸いです。

具体的な事例から話をするのが良かろうと思いますので、BBS論文のblindsightに関する項目あたりまとめてみようかな、と思ったのですが、この部分はNed BlockのBBSで想定されたsuper-blindsightに対する議論に終始していてあまりおもしろくありませんでした。ともあれ、どっかとっかかりを見つけようと考えております。(「かれらの論文への批判は機能主義に対する批判ですべて済んでしまうのではないか」とかそういうことも言ってみたいけど、私の手には余るんで、そっち方面はよろしくお願いします。)

cogniさんのところで言及がありました。Alva Noëの Action in Perceptionに関しては、draftでwebで公開されているときからチェックしていて、昨年のSFNで購入してからすこしずつ読んでいるところなのですが、まだはじめの方です(いま、自分のサイトを検索したら、まったく言及がなかったことを発見しました)。Richard Gregoryのnatureでのレビューはたしかそんなに好意的な採りあげ方をしてなかったような記憶があります。記述はBBSでのFilling-inに関する論文についてだったりして、ちゃんと読んだかも怪しいかんじがします。ま、この本はVarelaからの系統で反表象主義的ですし、そんなもんでしょう。Trends in Cognitive Sciences '05のレビューのほうがしっかり内容の説明をしている様子で好感を持ちました。

Evan Thompsonの方の話はenactionというよりはneurophenomenologyに関する話のようですね。Lutz et al(PNAS '02)に関してはPNAS '04ととも以前のエントリ20041203言及したことがあるのですが、あれがneurophenomenologyなら、げんざいの人での研究で行われていることとあまり違いがないなあ、と思ってます。Recognition memory testでfamiliarityを感じたか、recollectionを感じたかを報告させて解析する、なんてのでも同じことが必要で、あとはどのくらい被験者がその現象的な側面を分析できるか、程度の問題のように思います。

とはいえ、このことは軽視すべきことではないとは思っています。実際問題、familiarityかrecollectionかの報告がどのくらい信用に足るのか、というあたりがPhil. Trans. Roy. Soc.のepisodic memory特集のときに問題になっていたはずです。また、たとえばさまざまな脳損傷の患者さん(半側空間無視や病態失認や盲視)にさまざまな心理テストが行われて論文が出てきているのだけれども、そこでどのくらいその患者さんの現象的報告を活用できているか、という考え自体は重要だと思います。

たとえば盲視の患者さんは、awarenessの報告はないけれども弁別が出来るだけではなく、awarenessがあると報告するのだけれども弁別が出来ていない、ということが起こるらしいです。(Zekiはこの二つの現象を併せて、Riddoch syndromeと呼んでいます。) このことからすると、この患者さんのawarenessの報告はずいぶんと違った性質および構造(という言葉を使ってよいものやら)を持っていると言えそうなわけです。もっとも、科学に組み込まれた現象学ってありえるのか(現象学をnaturalizeするという問題)未だによくわかってないのでこれ以上言えないのですが。

といいつつ、現象学をnaturalizeするという問題については以前に調べたことがあるのでメモ。"Naturalizing Phenomenology"にはThompson,Noë,PessoaのFilling-inのBBS論文が再録されていて、Varelaの"The Specious Present"も入ってます。日本では、野家伸也氏がこのへんの問題を扱っています(「思想」の「認知論的転回 ―認知科学における現象学的思惟―」、オンラインで行けるのは、要旨だけだけど"ヴァレラの「自然化された現象学」をめぐって""「現象学の自然化」とメルロ=ポンティ"など)。

つれづれと。まだすこし次回につづきます。

コメントする (2)
# arational agent

pooneilさん、cogniさん応答ありがとうございます。こちらは記事書き楽しみながら、気楽にやっていますので、ご安心下さい。注文していたNoëの新著(Action in Perception)が最近手元に届いたので読み始めたところです。で、2001年のBBS論文では論証の過程で重要な役割を担っていたchange blindness、inattentional blindnessの扱いを確認してみたら、これがまるで別物になっている!かなり驚いています。はみ出たしっぽは自分で切ってしまったということなのでしょうか。

# pooneil

Indexを見た限りですと、BBSでの"sensorimotor contingency"も"sensorimotor dependency"になっているようですし、いろいろupdateさせているんでしょうね。まあ、こちらのほうもぼちぼち進めてゆきますので。


お勧めエントリ


月別過去ログ