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■ 視床が自発的行動に関わっている?

田中真樹さん@北大の論文がNature neuroscienceに出てます。
Inactivation of the central thalamus delays self-timed saccades - Nature Neuroscience
Central thalamus (おもにVL核、すこしMD核)にムシモルを注入して興奮性伝達を抑制すると、self-timedヴァージョンのmemory-guided saccadeでreaction timeが遅くなった、これが今回あきらかになったこと。
ふつうのmemory-guided saccadeではfixation pointの消灯がgoシグナルとなってsaccadeを開始させるが、このself-timedヴァージョンのmemory-guided saccadeでは、delay期間が800-1600msの間だったらいつsaccadeを開始させてもよい。いわば、ふつうのmemory-guided saccadeは「外的要因によってトリガーされた」なsaccadeであり、self-timedヴァージョンのmemory-guided saccadeのほうは「内的要因によってトリガーされた」saccadeであるわけです。
そういうわけで、self-timedヴァージョンでは、被験者は自分でdelay期間の経過時間を見積もって、最小のdelay期間800ms以降でsaccadeをしようとする。よって、saccadeの開始時間は800-1000msあたりに集中します。そこで、central thalamusへムシモルinjectionすると、saccadeの開始時間は800-1600msくらいに遅くなったと。いっぽうで、ふつうのmemory-guided saccadeのreaction timeもムシモルによって多少遅くはなったけれど、self-timedヴァージョンへの影響よりは弱かった、と。
そういうわけで、reaction timeの意味づけがふつうのmemory-guided saccadeの場合(fixation pointの消灯からsaccade開始までの時間)とself-timedヴァージョン(cueが消えてから、delayの経過を待つ時間があってから、saccade開始するまでの時間)とで違っているので、直接的な比較はあまり意味をなさないように思うのだけれども、ispi-contraの選択性も明確です。
Timingやdurationの測定にcentral thalamusが関わっている、ということでしょうか。でもただ単に時間感覚がずれた、とかいうことだと、ipsi-contralでの選択性があることが説明できないわけです。というわけで、ある行動に選択的であることから、その行動(contraへのsaccade)を自発的に開始するところにcentral thalamusが関わっているのではないか、と言えるわけです。Doug Munozがこの論文をF1000に選んでます。Munozが注目する理由はよくわかります。行動開始がvoluntaryであるか否か、という問題に関わるのではないか、ということでしょう。Monoz自身はprosaccadeをreflexive saccadeとして、antisaccadeをvoluntary saccadeとして扱ってこの問題に取り組んでいます(Nature Reviews Neuroscience 04 "LOOK AWAY: THE ANTI-SACCADE TASK AND THE VOLUNTARY CONTROL OF EYE MOVEMENT")が、今回の論文はそれと問題意識を共有しているように思います。
Memory-guidedであるが故に、where to sacccadeは決まっていて、when to saccadeが未定である、という状況であるところがポイントなのですな。Visually-guidedでself-timedであるような条件ではなにが起こるでしょうか。たとえば、targetはつきっぱなしなのだけれど、target-onからの経過時間によってrewardの量とかが変化するようにしておいて、タイミングを測らないようにしないといけないとか、そんな感じで。
あと根本的問題として、タイミング測定とかなしに、genuinely intrinsic triggerにするにはどうすればよいか、という問題についてとか。
なお、MD核の方はSommer and WurtzのScience '02 "A Pathway in Primate Brain for Internal Monitoring of Movements"によるSC-MD-FEFがSCからのsaccade開始情報のcollorary dischargeを運んでいる、という説で有名になったのだけれども、このへんはほんとうにいろいろなものがあるのだなあ、と。
なあ、Sommer and Wurtzとの関連では、JNP03 "Contribution of Signals Downstream From Adaptation to Saccade Programming"が、central thalamusのrecordingでsmooth pursuitでの結果はJNS05 "Involvement of the Central Thalamus in the Control of Smooth Pursuit Eye Movements"にあります。
追記:2005年06月28日のエントリが関係あるのでリンク。

コメントする (3)
# viking

はじめまして。友人にこのサイトを教えてもらって以来、興味深く拝見しております。近いテーマで研究しておりますので、特に論文に対するコメントの数々は非常に参考になります。
ところで、こちらのblogではtrackbackの機能は使用されておられないのでしょうか?僕のblogからtrackbackを送ろうとしたのですが、「トラックバックする」をクリックしてもURIが表示されませんので少々戸惑っております。もし機能を停止されているようならば、コメントで代用といたしますので。

# pooneil

どうもはじめまして。trackbackに関してですが、いろいろいじっている過程で使えなくなっていたようです。道理でtrackbackが全然なかったわけでした。というわけで、お知らせいただきまして、どうもありがとうございます。はやめに直しておきたいのですが、すぐには対処できませんので、必要でしたらコメント欄の方で通信をお願いします。お手数かけまして恐縮です。
なお、リンクされていたvikingさんのサイトに行ってみようとしたのですが、ユーザー認証がかかっていて、入れませんでした。

# viking

お返事ありがとうございます。しばらくはコメント欄を利用させていただきます。
ところで、認証がかかっていた件ですがSPAM対策等で色々といじっておりましたもので大変失礼しました。設定を変えてみましたので、お試しください。万一アクセスできないようでしたら、またご連絡いただければありがたいです。


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