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■ Nature 10/14

"A general mechanism for perceptual decision-making in the human brain." L. G. UNGERLEIDER
これひどい論文だと思うんですけど、なんでこれがNatureなんでしょう。
これまでShadlenとNewsomeがやってきたperceptual decisionの実験系では左右に動くランダムドットがあって、左に動くドットと右に動くドットの二つのevidenceを比較してどっかで右か左かdecisionする、というフレームワークを使ってきています(たとえば12/20で採りあげたやつ)。
んで今回Ungerleiderはこれをhuman fMRIで顔および建物の二種類の画像にノイズを加えて、顔か建物かを判別させるような課題での脳の活動を調べたというわけです。これは例の顔領域(fusiform face area)と場所、建物領域(parahippocampal area)とで顔や建物に対する反応がsegregateしていることを活用したということです。
同一の刺激に対して顔であると判断したか建物であると判断したかでこれらの領域の反応が変わったとしたら面白いと思うのですが、そういうことはなくて、単にノイズを加えた量によってactivationの大きさが変わることを示してます(Fig.2)。それはあたりまえだし。
一番重要なデータはFig.4です。顔領域での顔応答(Face(t))と建物領域での建物応答(House(t))とを比較してperceptual decisionをしているところがどこか、ということを調べたら、posterior DLPFCだったと。つまり、posterior DLPFCのBOLDシグナルは知覚応答の差分Face(t) - House(t)と相関していたと。でもそれではたんなる刺激応答と分離できてないでしょう。Near-thresholdのambiguousな刺激があるときは顔に見え、あるときは家に見えたとして、そういう入力がまったく同じ状態でのperceptual decisionの結果とBOLDシグナルとが相関しているのでないかぎり、perceptual decisionのneural correlateとはとても言えません。しかもその場合にはmotorの要素を揃えなければいけないし。
いったいShadlenとNewsomeはなにをやってたのでしょうか。彼らのどちらもがレフェリーに入ってないなんてありえません。Glimcherのような同業者は落としたくせに、human fMRIだと自分たちの陣営の援護射撃になると思って結果がヌルくても通してやる、そんな政治判断が透けて見えますけどね(まったくの推測だから信用しないように。でも本当っぽいでしょ)。
あと、Fig.4のデータの点をよく見てもらうと、これに一本のregression lineを引くことのイカサマさが見えてきます。明らかに二つのクラスターがありますよね。正答率0.7あたりのものと正答率0.95あたりのもの。なんか気付いてないパラメータがあって、じつはslope=0の二つの直線(y=0.7とy=0.95)でANCOVAでregressionするようなデータだと思うんです(刺激の種類が少なすぎて、簡単な条件と難しい条件の二つぐらいしか実際には条件を振れてないのでしょう、だったらそんなのでパラメトリックにやるべきではないし)。
いちおうこの論文の意義としては、Shadlen and Newsomeのランダムドット(MTあたりの視覚野が使われていると思われる)での実験パラダイムがventral pathwayの高次視覚野を使っているであろうperceptual decisionにも一般化可能であること、そのようなdecisionのevidenceをじっさいに比較しているところの候補としてposterior DLPFCを見出したということです。この場所はGold and ShadlenのNatureでのDLPFCに対応するから尤もらしい、と言えます。しかし以上に挙げた理由から私はまったくこの論文を評価できません。
とはいえ私はこの論文を精読したわけではないので、読み込んだ方、事情をご存知の方のコメントをお待ちしております。とくにイメージングをやってる方の参入を超encourageします。


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