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■ Nature Neuroscience 7月号
"Automatic avoidance of obstacles is a dorsal stream function: evidence from optic ataxia."
つづき。
じつは著者らはほぼ同じタスクを使ってspatial hemineglectの患者さんで同じテストをしています。spatial hemineglect(半側空間無視)は主に右のPPCの損傷によって左視野半分への注意が向かなくなる、というもので、基本的に視覚注意の障害です。
"Preserved obstacle avoidance during reaching in patients with left visual neglect." Neuropsychologia '04
こちらでは結果はまったく逆で、円柱のあいだを手を伸ばすときには、円柱の位置によって手の軌道に変化を受けます。つまり健常者とまったく同じで、automatic avoidanceは可能です。しかし、円柱の中間を示すタスクではちょうど真ん中を指すことが出来ません。これは左側の円柱が無視される影響で中心より右側を指すということが起こるためです(じつは結果はしょぼいのだけれど)。
つまり、この二つの論文の結果を合わせると、double dissociationが起こっていることがわかります。つまり、optic ataxiaもhemineglectもおなじPPCの障害によって起こる症状であるにもかかわらず、optic ataxiaの方ではautomatic avoidanceの機能のみに、hemineglectの方では視覚注意の機能のみに障害が起こり、別の機能には障害がありません。つまり、optic ataxiaとhemineglectとで傷害される部分は別の独立した機能を持っていることがわかるのです。
それではじっさいの障害部位はどこか、といいますと、
"Two different streams form the dorsal visual system: anatomy and functions." Giacomo Rizzolatti and Massimo Matelli
によりますと、上のほう(SPL)が傷つくとoptic ataxiaになって、下のほう(IPL)が傷つくとhemineglectになる、ということのようです。じっさいには単純にSPLとIPLとに分けられるかどうか疑問でして、optic ataxiaの方がparietooccipitalである、というように書いている場合もあるようですが。なんにしろ、Rizzolattiはそれまでのanatomyなどの結果から、PPCには二つのpathway、SPLを通る経路とIPLを通る経路とがある、ということを提唱しています。(じつは、ventral pathwayでも単一の経路があるのではなくて、STSの中を通るような別の経路がある、という話があるんですが、それはまたいつか。)しかし、Rizzolattiはいろんなことやってますな。
なお、PPCのもう一つ重要な機能としてbody schemaの形成というものがありますが、これも二つの症状で現れ方が違っておりまして、optic ataxiaの患者さんの多くは、自分の体を指差すときには不思議と問題がなかったりします。一方、hemineglectの患者さんはしばしば空間を無視するだけでなく、自分の体の半分も無視するという現象が起こります。つまり、IPLのほうがおそらくはbody schemaの形成に関わっているということでしょう。(>>Correggioさん、合ってますか?)
明日つづきを貼ります。これで最後。Goodale and Milnerに関連して。
追記:Rizzolatti and Matelliでoptic ataxiaとneglectについてどう書いてあるか貼っときます。
Lesions centered on SPL determine optical ataxia (Ratcliff and Davies-Jones 1972; Perenin and Vighetto 1988). Lesions of the right IPL, especially its lower part, produce neglect (Vallar and Perani 1987; Perenin and Vighetto 1988). (中略) These data suggest a clear dichotomy between the functional roles of SPL and IPL. SPL is involved in action organization. In contrast, IPL is deeply involved in perception, but it is also involved in the organization of motor activities.
というわけでSPLとIPLという言葉はhumanのものですので、ご隠居の誤解ではありません。Correggioさんも書いているようにRozzolattiは相同に関しては回避している模様です。
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- / 投稿日: 2004年07月15日
- / カテゴリー: [腹側視覚路と背側視覚路]
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# Correggio
じつは、そういう風にきれいに行けばいいのですが。。。。実は、Rizzolatti等の主張とGalletti等の主張の根拠は基本的にはそんなに違っていません。解剖学的に、確かに二つの経路(正確には3つか)に分ける。つまり、V6-V6A-MIP-PMd のV6-VIP-F4の背側背側経路とCIP-AIP-F5(実はもう一つPF-F5こっちはミラーニューロン)の背側外側経路です。大まかにいえば、到達運動に関わるのが背側内側経路、背側内側経路は把握運動というふうに考えられますが、Gallettiたちは背側内側経路も把握運動に関わっているといっています。ところで、ヒトSPLとIPLはサルのどこにあたるのかははっきりしませんが(Rizzolatti等もはっきり言ってない感じ)とりあえず背側外側のMIP経由はSPLをとおり、背側内側経路はIPLを通るとして、でも、こうするとVIPの経路はどっちにはいるのかなあ(一応RizzzolattiたちはIPLにいれてるみたい)。で、V6-V6Aの経路が、optic ataxiaに、そして、VIPの経路が空間無視に、AIPの経路は、失行症に関わると考えられます。身体感覚は、どちらともいえないようです。Shiriguたちの1999年の論文(Brain)では、自己と他者の手の視覚イメージが、どちらに属するのか区別できない症例の中に39野と40野の傷害の例を挙げています。一方、Wolpertの1998年のNature neuroscienceでは、SPLで、身体感覚の障害を示す患者の例を紹介しているのです。確かに、ニューロンの記録では、入來さんやGrazianoはSPLですし、Hyvaerinenの記録は、PFですね。
# pooneil解説ありがとうございます。うーむ、そんなに簡単ではないようですね。GallettiのEBRのイントロを読んでみました。SPLからPMdへ行くのがreachingで、IPLからPMvへいくのがgrasingというパラレルなstreamがある、という考え自体は以前から提唱されていて、しかもそれがすでに批判にさらされている、ということからすると、GallettiのもRizzolattiのもそれのmodificationみたいな立場にあるようですね。身体感覚がIPLってのはかなり納得がいってたのですが、なるほどうーむ、もちろんSPLとIPLとのあいだでの情報伝達もあるんでしょうけど、不思議な話ですね。SPLの方がおそらくsomatosensoryとの関連が強いだろうし、IPLの方がミラーニューロンのシステムとの関連は強いでしょう。よって身体図式といっても、違った要素からできているということなのかもしれません。
# mmmmYeung&Sanfey(reward magnitudeとvalenceとの分離の論文)を一瞥しただけの茶々です(並立スレッドを立てると混乱しそうですが)。課題も面白いし、Fig. 2はかなり美しいですね。本当はregret(あるいはfactual vs counterfactual)も含めてtriple dissociationを狙ったんでしょうね。ところがこの三番目のfactorでmedial frontalを狙ったのは失敗だったのかもしれないですね。この論文ではbehavioral adjustmentと関連づけるという間接的な役回りを果たしているようです。Camille et al. (2004) Science 304:1167-1170がfMRIを使ってOrbitofrontalで出し抜いた形になってしまいました。
# pooneilmmmmさん、ありがとうございます。なるほど、そのように読めるのですね。とっかりがなくてどう捉えたらよいかわからなかったのですが。Camille et al. Science ’04は5/22にリンクしておいたものですね。もういちどリンクし付けときます。
# pooneilCorreggioさんから上のコメントの清書バージョンをいただきましたので、ここに貼っておきます。あとで編集するときに忘れないように。Correggioさん> じつは、そういう風にきれいに行けばいいのですが。。。。Rizzolatti等の主張とGalletti等の主張の根拠は基本的にはそんなに違っていません。解剖学的に、確かに二つの経路(正確には3つか)に分けられる。つまり、V6-V6A-MIP-PMd のV6-VIP-F4の背側内側経路とCIP-AIP-F5(実はもう一つPF-F5こっちはミラーニューロン)の背側外側経路です。大まかにいえば、到達運動に関わるのが背側内側経路、把握運動は背側外側経路というふうに考えられますが、Gallettiたちは背側内側経路も把握運動に関わっているといっています。ところで、ヒトSPLとIPLはサルのどこにあたるのかははっきりしませんが(Rizzolatti等もはっきり言ってない感じ)とりあえず背側内側経路のMIP経由はSPLをとおり、背側外側経路はIPLを通るとして、こうするとVIPの経路はどっちにはいるのか。(一応RizzzolattiたちはIPLにいれている)。で、V6-V6Aの経路が、optic ataxiaに、そして、VIPの経路が空間無視に、AIPの経路は、失行症に関わると考えられます。身体感覚は、どちらともいえないようです。Shiriguたちの1999年の論文(Brain)では、自己と他者の手の視覚イメージが、どちらに属するのか区別できない症例を報告し、39野と40野の傷害の例を挙げています。一方、Wolpertの1998年のNature neuroscienceでは、SPLで、身体感覚の障害を示す患者の例を紹介しているのです。確かに、ニューロンの記録では、入來さんやGrazianoはSPLですし、Hyvaerinenの記録は、PFですね。