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■ 半側空間無視関連いくつかフォローアップ

しばらく半側空間無視の論文をフォローするのをサボってた。Urbanski et al Exp Brain Res. 2011 "DTI-MR tractography of white matter damage in stroke patients with neglect" SLFII離断説のBartolomeoの続報だけど、strokeでは内包前脚とかarcuate fasciculusとかに成績と相関が出る。やっぱ簡単な話ではないのだな。

あと Verdon et al Brain. 2010 "Neuroanatomy of hemispatial neglect and its functional components: a study using voxel-based lesion-symptom mapping" こっちではいろんなテストをやって因子解析して、それぞれの因子が別々の損傷部位によって担われている、みたいな議論をしている。ついでながらfig.6には同名半盲のlesion mapもあっていろいろと捗る。

PLoS ONE 2011: "Testing for Spatial Neglect with Line Bisection and Target Cancellation" これではangular gyrus。

Corbetta and Shulman Annual Review of Neuroscience 2011 "Spatial Neglect and Attention Networks"では、ventral側の損傷によってdorsal側のネットワークが影響を受けるというストーリーになっている。

あれ? 以前のHe et.al. Neuron 2007 "Breakdown of Functional Connectivity in Frontoparietal Networks Underlies Behavioral Deficits in Spatial Neglect"ではdorsal側の損傷によってventral側のネットワークが影響を受ける(functional connectivityが落ちる)っていう主張だったと思ったんだけど。

というわけでなにげにふたたびventral説が優勢になっている模様。


Committeri et. al. Brain 2007 "Neural bases of personal and extrapersonal neglect in humans" personal neglectの原因部位はdorsal側のsomatosensoryとかとの結合が強くて、extrapersonalはもっとventral側。

これとconsistentなデータとして、Rizzolatti et al 1985ではnhpでextrapersonalはFEF、personalは7b(!)というデータを出している。Attention and performance XIなので取り寄せる。

さらにそのあとでF4がperipersonal spaceをcodingって話があるから、F4-PFのミラーニューロンシステムってのがpersonal neglectと関わっているという話になってもよさそうだ。

前述のCommitteri et al. (2007) ではpersonal neglectはsupramarginal gyrusで、extrapersonal neglectはSTG and the inferior frontal gyrus。

これが最新の話か。 Personal neglect(身体無視): Mochi's-Multitasking-Blog そんなにすっぱりいくわけでもないらしい。原因部位はTPJとその下の白質。


半側空間無視の論文を読んでいくと(W. Russell) BrainによるBrain 1941 というダジャレみたいな論文が出てくるのだけれども、この世界での古典的な論文なのであった。

Brain誌の"from the archives"というコーナーでこの論文の位置づけが紹介されている。これ以前にもdisorientationの症状についての報告はあったけれども、ある種のagnosiaとして捉えられていたりして、それをneglect of the left half of external spaceと捉えて、しかもextrapersonalおよびpersonal neglectの両方があることを示した、というところだろうか?

もっともBrainはイギリスのジャーナルだし、neurologyの世界はヨーロッパ勢が強いので、これが最初かはよく分からない。以前Anton症候群を調べたときはそんなかんじで、英語圏が遅れて言及しているというかんじだった。

そういえば有名なスタジオ・ミュージシャンでハル・ブレインって人がいたよな(わたしにとってはビーチ・ボーイズの"Pet Sounds"のドラマー)、とか思って綴りを見たら"Hal Blaine"だった。というわけでRとLの区別の付かない日本人、というオチ。


TPJ-VFCを繋ぐ線維のひとつがextreme capsule (EmC)。そういえば以前にCrick/KochがCraustrumが意識に関わるかもみたいな話を書いてたけど、半側空間無視のような意識の「統一性」の場面で考える意義があるかも。

EmCはmacaqueではSTSからvPFCへ投射する線維のあるところ。つまり、shapeの情報が側頭葉から前頭葉の12野辺りに行くところ。そういう意味ではCorbettaの図式にもよく合っていて、背側、腹側視覚路がそれぞれ前頭葉に向かうネットワーク。

ただし、EmCはちょっとventral過ぎる気もする。Arcuate fasciculusとかのほうがもうちょっとTPJっぽいところから出ている雰囲気。(nhpのTPJがどこかなんてわからないけど。) こっちがextrapersonalで、SLFIIがpersonalとかどうよ?

背側側を考えると、SLFIIIがいちばん浅くて、いちばん短い(PF-F5)。SFLIIが一段深くてLIP/V6-FEF/PMdってかんじ。FOFがいちばん深くて、いちばん遠い(V3/V6c-46d)。この3つがRizolattiの言う2つの背側経路の腹側のものか。

とかいうことを"Fiber Pathways of the Brain" Schmahmann and Pandya 2006 読みながら考えた。


Monkey to human comparative anatomy of the frontal lobe association tract(pdf) ヒトとマカクで白質走行の相同をまとめたもの。AFとかSLFIIIとかの妥当性が気になる。

Arcuate fasciculus(AF)は左脳ではウェルニッケとブローカを繋ぐところで、これの損傷で失語症が起こる。右だとこれが半側空間無視のventral networkだとたぶんHO-Karnathとかは考えているんだろう。

The evolution of the arcuate fasciculus revealed with comparative DTI この論文だと、AFはマカクやチンプでは未発達なので、これがヒトの言語発達と関連してるって話になる。


サイエンスミステリー2012 - フジテレビ 家族と家で録画した番組を見ていたら、半側空間無視が取り上げられていたので食い入って見てしまった。子どもたちにいろいろ説明をした。

かなり印象的だったらしくて、あとで次男は「ハンソク・クーカン・ムシ!」とか言いながら寝室に飛び込んできた。なんか俺っぽい。じゃまた来週。


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