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■ 国道でsaccadic suppressionについて考えた

夜、国道を車で走っていて、saccadic suppressionが無効になるのを経験した。国道なんで目の前基本的に暗闇なんだけど、中央分離帯に現在の気温を示す標識っつーか情報ボードがあった。それで、ちょうど右サッカードしたときにそれが視野に入ったらしく、左方向にたなびいて見えた。

面白いと思ったのは、それがつながった灯りじゃなくて、コマ送りみたいに複数(10個くらい)見えたということだ。その前になんでサッカード中の温度標識が見えたかというと、それは暗闇で高コントラストの刺激があったからだ。普段の我々の条件ではサッカードの前後には高輝度コントラストの刺激があるので、それによって前後方向からマスクされる。このVisual maskingによって、サッカード中の視覚(動きによってぼけているため、コントラストが低い)がマスクされるので、われわれはサッカード中のぼけた映像を経験することがない。

それとはべつのメカニズムでsaccadic suppressionというのがあって、サッカードをするというコマンドを内部的に活用することによって、視覚によるフィードバックが戻って来るよりも早く、サッカード中の視覚ニューロンの活動を一時的に弱めてやるという機能がある。

Saccadic suppressionはフィードフォワード制御が脳でも使われているという意味で面白い現象ではあるけれども、サッカード中の視覚の抑制という意味ではvisual maskingの方が寄与が大きいらしい。(Wurtzのvision researchのレビューより)

それで、私がそのとき面白いと思ったのは、サッカード中の視覚がぼやけた流れではなくて、コマ送りのように見えたことで、おお!知覚とはじつは断続的なものなのだな!とか感激したんだけど、その1分後ぐらいになって、端的に光源が高頻度でフリッカーしてただけではないかということに気づいた。

つまりあれ、アートでありますよね、サッカード中だけ模様が読めるやつ。未来館で見た。たぶんそれではないかとアタリを付けて、ためしにどのくらいの周波数でフリッカーしてたか試算してみる。

けっこう大きなサッカードをしていたから試しに30degだったとして、サッカードには50msくらいは要しているだろう。そこで10個以上は刺激が見えた。5ms=200Hzで発振してるってことになる。うーむ、60Hzだったら納得がいくんだが、それよりは速そうだ。

まだ釈然とはしないが、そんなことを考えた。


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