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■ 「解明される意識」の翻訳にツッコミ
南山大学セミナーにあわせて「解明される意識」で盲視に言及しているあたりについてまとめておこうかなと思って読んでるんだけど、さっぱり読めない。訳がけっこうぼろぼろだと思うんだけど。訳者は哲学の人だから脳科学の知見のあたりは不得意なのだろう。
しかたないので原書の方に行ったらそっちのほうがわかりやすかった。訳書 p.402 刺激の「突出」が増大 => 原書p.338 stimulus "salience" increases とか。
訳書の同じページにはこうある:
また別の被験者たちは、「暗い影」が明るく眼を引くものとして現れて、それがどんどんはっきりしていくのだと、報告している。
どうも言っている意味がわからない。ここは原書を見ると誤訳だ。
Other subjects report "dark shadows" emerging as brightness and contrast are increased to high levels.
ここはじつはtype IIの盲視についての説明なのだ。(type IIの盲視については以前書きました:「盲視でおこる「なにかあるかんじ」) だからわたしが訳すとしたらこんなかんじになる:
ほかの被験者たちは、(視覚刺激の)明るさとコントラストが高くなるにつれて現れる「暗い影」について報告している。
これだと直訳調なのでもうすこしかみ砕くと:
ほかの被験者たちは、(視覚刺激の)明るさとコントラストが高くなるにつれて「暗い影」が現れる、と報告している。
この部分に関してはたまたまわたしは予備知識があったので、意味的に言ってこういうことだろうってわかる。
でもそうでなくても、文法的に考えてみても、元訳のようにbrightnessがshadowsのbrightnessであるという解釈はありえない。もしそうならas THEIR (or THE) brightness and contrast となるはずだからだ。すくなくとも無冠詞にはならないだろう。
あ、わかった。文法レベルで誤解してるんだ。
Other subjects report (that) ["dark shadows" emerging as brightness and contrast] are increased to high levels.
って読んでるんだ。ほんとうはこうでしょう:
Other subjects report ["dark shadows"] (that is) emerging / as brightness and contrast are increased to high levels.
それはそれとして、日本語でこういう本の翻訳が出るということは得難いことであって、わたしもいろいろ洋書を買ったりするけど、けっきょく積んでて、訳書が出てからそっちを読むことになる。やっぱ読めるスピードがぜんぜん違う。たぶんほかの分野の本もそうなのだろう。訳書はとばして読んで、原書で精読するってのがよい。訳書で精読するってのは戦略的に正しくない。原書でとばして読めるなら訳書はいらない。そして、わたしには訳書が必要だ。
(ついったに書いたことを元に編集して作成した)
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- / 投稿日: 2011年04月13日
- / カテゴリー: [視覚的意識 (visual awareness)]
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