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■ 要旨集に議論を掲載しました

生理研研究会「認知神経科学の先端 動機づけと社会性の脳内メカニズム」ですが、webサイトの方はどんどんアップデートしてます。チェックしてみてください。

神経科学者SNSの専用コミュでトラベルアワードの選考を兼ねて、総合討議での質問を募集してきました。締め切りは過ぎましたが、現在も議論は継続しています。投稿者の許可を頂いて、要旨集に掲載しました。読んで楽しめる要旨集を目指しています。ダウンロードはこちらから:要旨集 ver.3(PDF)

神経科学者SNSに入らなくてもこれは読めます。神経科学者SNSでの議論の様子がうかがえるかと思います。議論に参加したい方はぜひ神経科学者SNSまでぜひ。(研究会への参加申し込みがまだの方はまずそちらからお願いします。)

ここ数日では「定義」の問題の議論になってます。つまり、「動機づけ」「社会性」は定義づけることができるか、とか。例として、わたしの書き込みを下の方にコピペしておきます。

ちょっとほかでは見たことのないような形を作れているんではないかと思います。"We are doing things that haven't got a name yet."なんてかんじで。

それでは、岡崎でお会いしましょう。


29: pooneil

定義問題は重要ですね。これは「動機づけ」や「社会性」だけにかぎらず、認知神経科学におけるほぼすべてのドメインで問題になることかと思います。例として「注意」そして「意識」での話を書きます。

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William Jamesによる注意の定義の話ってのがあります:

"Everyone knows what attention is. It is the taking possession by the mind in clear and vivid form, of one out of what seem several simultaneously possible objects" (Principles of Psychology (1890))

この冒頭にある"Everyone knows what attention is."ってところに「あれだよ、あれ」みたいな、定義する苦しみを感じるわけですが、要は「注意」という言葉がなにを指しているかは同意が取れるけど、それを操作的に定義しようとすると詰まってしまう、という事態になるわけです。

私自身の考えとしては、ここはrecurrentな過程だと思っています。つまり、日常言語的に「注意」という言葉を使って指しているものを、実験的に検証できる形で扱うことによって、「注意」という言葉で指しているものにいろんなものがあることがわかってきて、定義がrefineされてゆくわけです。そういう意味では、上記のJamesの定義はattention一般に対するというよりは、"selective attention"に対するするものと言った方がよいでしょう。(arousalに近い、sustained attentionみたいな概念があります。) 注意全体としての定義はより包括的なものとなる必要が出てきます。

たとえばParasuramanはこう定義しています:

"Attention is not a single entity but the name given to a finite set of brain processes … all three aspects of attention serve the purpose of allowing for and maintaining goal-directed behavior in the face of multiple, competing distractions." (The attentive brain (1998))

ここでの冒頭の"** is not a single entity but the name given to a finite set of brain processes"というのはいろんな研究ドメインで活用できそうなフレーズです。

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同様にして、「意識」の定義に関してもJohn Searleはこんなことを書いています:

(「意識」は操作的に定義できないから科学の対象にはならないのではないか、という質問に対して) We need to distinguish analytic definitions, which attempt to tell us the essence of a concept, from common-sense definitions, which just clarify what we are talking about ... What we need at this point in our work is a common-sense definition of consciousness and such a definition is not hard to give: 'consciousness' refers to those states of sentience or awareness that typically begin when we wake from a dreamless sleep and continue through the day until we fall asleep again ("How to study consciousness scientifically", 1998)

われわれがなにについて話しているのかについてはズレないようにcommon-sense definitionを定義すべきですが、その現象の本質を突くようなanalytic definitionは研究を進めて行く過程でこそ得られるものだ、というわけです。


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