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■ 生理研研究会 オンライン参加申し込みを開始しました
生理研研究会 「認知神経科学の先端」ですが、今年は玉川大学の松元健二さんとともに「動機づけと社会性の脳内メカニズム」というタイトルで行います。日程は2008年9月11-12日。以前アナウンスしたエントリは20080609。
そこからなかなか進んでいませんでしたが、研究会のサイトをアップデートしてオンライン参加申し込みを開始しました。参加申し込みフォームのページ。参加申し込み要領をよくお読みになってからお申し込みください。多くの方の参加をお待ちしております。
6月の視覚研究会のときに配ったビラに書いた講演者紹介をコピペしておきます。(一部松元さんに増補していただいております。) それではここから:
講演者の方の紹介など。
さて、ここからはもっとくだけたかんじで講演者の方の紹介を書いてみます。Pooneilブログ出張版?とでもいいましょうか。
大まかに分けると「動機づけ」パートが南本さん、出馬さん、村山さんで、「社会性」パートが細川さん、守口さん、遠藤さんです。それぞれのパートに動物実験、ヒトでの実験、社会心理の方に入っていただきました。動機付け、社会性、ともにどうやって実験の形に持ち込めばいいか、ということがなによりも難しいところだと思います。そこで、実験を通してアプローチしている先生方に加えて、社会心理の先生方にトークをしていただくことで動機付け、社会性という概念の広さを踏まえた議論ができるようにと配慮しました。
南本さんは京都府立大の木村先生のところで視床CM核の仕事("Complementary process to response bias in the centromedian nucleus of the thalamus." Science 308: 1798-1801, 2005)を出版されました。そのあとNIMHのBarry Richmondのところに留学されて、rewardのスケジュールと行動の関係に関する仕事をされて現在は帰国し、放医研に在籍しています。放医研にだんだんシステム関係の人が集まってきてますね。今回の講演ではおそらくNIMHでのお話をしていただけるのではないでしょうか。まだ未出版かと思いますが、SFNのアブストと説明が木村研ラボのサイトで読めます。このあいだRichmondが生理研に来たときのトークで一部を聞かせていただきました。要は課題を行ってからrewardが出るまでの時間を振っておいて、それをcueで予測できるようにしておくと課題の成績がcueによって影響を受けるようになる、というものです。これまでの設楽さんや菅瀬さんが行ってきた一連の研究と併せて、動機づけの研究としてどう捉えたらよいか、というあたりが論点のひとつとなるのではないでしょうか。
出馬さんは生理学研究所の心理生理学、定藤先生のところに所属している博士課程3年生の方です。昨年の生理研研究会でポスター発表をしてくださった研究が今年の4月にNeuronに掲載されました("Processing of Social and Monetary Rewards in the Human Striatum" Neuron, Vol 58, 284-294, 24 April 2008)。他人に褒められたときに活動する脳部位と、お金を報酬としてもらったときに活動する部分とが重なっていた(ともに線条体に activationがあった)、というものです。報酬と動機づけに関わるだけでなく、社会性に関しても関連のある仕事であると思います。
村山さんは東大教育心理を出られて東工大に在籍してからRochester大学に留学されてAndrew Elliotの研究室に在籍していました。Andrew Elliotは達成動機づけ理論にかんする第一人者です。動機づけには報酬と絡めた意思決定のような外発的動機づけだけではなくて、内発的動機どけというものがあります。そういう人間らしい複雑な部分をどうやって捉えて脳研究に結びつけたらいいのか、ということについてコメントしていただけるかと思います。また、村山航さんのホームページは心理統計などに関する有用な資料があります。わたしは知らず知らずのうちにお世話になってました。
細川さんは霊長研出身で現在は神経研の渡邊正孝先生のところに所属していらっしゃいます。昨年の神経科学大会のシンポジウムでも発表されていた対戦ゲーム中のサル前頭連合野ニューロン活動についてのお話をしていただけるのではないかと思います。この研究はサルどうしの対戦という実験系からして社会性に関する研究としてわたしは理解していたのですが、かならずしもそれだけではなく、動機づけの研究という側面も持っているようです。つまり、相手と競うという条件であることが動機づけに影響を及ぼすのではないか、rewardそのものだけではなくて相手に勝つということが動機づけとなるのではないか、というわけです。ということで本研究会の両テーマに関わるトークとなるのではないかと思います。
守口さんは国立精神・神経センターに所属されていて、アレキシサイミア(失感情症)の患者さんについて研究をされています。アレキシサイミアの患者さんは自己の情動の同定・表象が困難な症例ですが、これを「心の理論」の障害と捉えて機能イメージングを行った論文が出版されました("Impaired self-awareness and theory of mind: An fMRI study of mentalizing in alexithymia" NeuroImage 32 (2006) 1472-1482)。これで活動するのもやはりmedial prefrontal cortex。東北大学グローバルCOE若手フォーラムでのトークについての報告がwebにありますが、これをみると、さまざまなコンテクストを絡めたお話をしていただけるのではないかと期待しております。
遠藤さんは東大教育心理の准教授をされています。専門はアタッチメント、つまり発達時に母子が親密であることがどのように重要なのかに関する研究ですが、これは社会性の基礎となる概念であります。また、アタッチメントの概念自体はヒトだけでなく、もともと動物の行動観察から見出されたものであります(いま wikipediaにそう書いてあるのを見つけた)。「心の理論」などと併せて、社会性に関する大きなパースペクティブからコメントをいただけるのではないかと思います。
以上の6人の先生方で研究会を行います。指定討論者の先生方もまたあらためてお願いしますので、依頼された方はぜひ引き受けてガンガン質問、議論してください。今回も途中質問有りにしておきたいと思いますが、総合討論の場を作ってもっとgeneralな議論ができるようにします。でも、いわゆる学会のパネルディスカッションみたいにすると盛り上がらない。たんに補足質問タイムになってしまう。だから、なんか煽り気味のネタを用意したり、あらかじめ募集しておいたりしたらどうかと考えています。たとえば、「動機づけって概念はほんとうに必要か? すべては報酬による意思決定ではないのか」とか。ふつうだったら紛糾して時間切れになるようなネタを30分かけて議論できたらいいんではないかと思います。このへんの形式についてはまた計画ができたら発表したいと思います。
それでは、みなさまぜひお越しください。
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- / 投稿日: 2008年07月31日
- / カテゴリー: [生理研研究会2008「動機づけと社会性の脳内メカニズム」]
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