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■ Francis Crickの脳科学への寄与

つづき。

  • Nature '95 "Are we aware of neural activity in primary visual cortex?" by Francis Crick & Christof Koch。この組み合わせになってはじめての論文のはず。これも基本的には領野レベルの議論なんだけれど、前頭前野でのワーキングメモリー(これは悪しき「意識の劇場」概念の継承なんだけど)がアクセスできる領野しか意識には関わらないと考えると、V1は前頭前野とは直接結合がないので、意識には直接関わらない、とする作業仮説を提出したのです。作業仮説なので、著者としてもrejectされてぜんぜん構わないとしているのですが、もちろんいろんなやり方で反論が可能で、じっさいPollenがのちにコメントしています。私もこっちに付きます。この辺は以前のJon Driverのレビュー関連とあわせて、あらためてきちんと書いておくべきことなのでここではやらないでおきます。
  • Cerebral Cortex '98 "Consciousness and Neuroscience." Francis Crick and Christof Koch。LogothetisのBinocular rivalryでの"visual awarenessのneural correlate"を大々的にフィーチャーしています。
  • Nature '98 "Constraints on cortical and thalamic projections: the no-strong-loops hypothesis." FRANCIS CRICK AND CHRISTOF KOCH。大脳皮質の領野間の結合は大胆に単純化すれば、layer 2/3 -< layer 4 (forward)、 layer 5 -< layer 1/6 (feedback)となっていますので、興奮性ニューロンだけで領野間でlayer 4 -< layer 4のループができることはありません。そういうものがあっても、興奮性ループに抑制性ニューロンでのrecurrentの回路を入れておけば適当なところでoscillationするようになるのでそれでいいようにも思いますが、実際問題そういうふうにはなっていないのです(これは領野内のlayer間結合でも同じで、layer 4 -, layer 2/3は興奮性ニューロンですが、layer 2/3 -< layer 4は抑制性ニューロンしかないようです。このへんに関する参考文献はCerebral Cortex '03 "Interlaminar Connections in the Neocortex."。Fig.1は印刷して机に貼っておく価値があります。また、The Journal of Comparative Neurology '98 "Area-specific laminar distribution of cortical feedback neurons projecting to cat area 17: Quantitative analysis in the adult and during ontogeny."を見ると、feedbackの起点はほとんどlayer 5で、layer 6やlayer 2/3はadultではほとんどないことがわかります。)。んで、それと同様に、大脳皮質と視床との間でもそのような興奮性ニューロンが直接つながったstrong loopはないであろう、ということを予言しているわけです。それはそうかもしれないけれど、あまりインパクトはありません。どこがNatureなんだろうか。
  • Nature Neuroscience '03 "A framework for consciousness." Francis Crick & Christof Koch
  • "The zombie within." Christof Koch & Francis Crick
    これら二つは、CrickがChalmersの議論(視覚運動変換の情報処理の全てを備えたうえでしかし視覚意識を持たないような「ゾンビ」を考えることができること)を通過してより慎重な態度にアップデートしたCrickとKochの理論の最新バージョン。読んでないけど。このへんはおそらくはKochがメインでやっているのではないでしょうか。
うーむ、尻切れトンボだけど、というわけで、追悼。


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