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■ Resting-state fMRIでマカクにもVANが見つかった

こんどの日本神経科学大会では「注意の脳内ネットワーク」と題してシンポジウムを開催することになってる(9/13(土曜)午後5時-7時)。これはわたし吉田とチュービンゲン大学のZiad Hafed博士とで行っている国際研究協力の一環となるものだ。(JST 戦略的国際科学技術協力推進事業 「日本-ドイツ研究交流」 )

このシンポジウムの講演者は四人で、吉田、Ziad Hafed、東大の坂井克之さん、ベルギーのWim Vanduffelというメンバーとなった。そういうわけでWim Vanduffelには今度の9月に日本に来てもらうので、それの予習を兼ねてジャーナルクラブで論文を読んでみた。

JNS2013 "Evolutionarily Novel Functional Networks in the Human Brain?"

Resting state (というかfixation task)でもfMRIにICAをかけてるとBOLD活動がいくつかのクラスターに分かれて、それをヒトとマカクで対応づける。V1, M1などはよく対応するとして、dorsal attention network (DAN)も対応がつく。DANはヒトでもマカクでも両側にある。

マカクでもventral attention network (VAN)に対応したものが見つかって、posterior STSのあたりとmedial prefrontalのネットワークが見つかる。IFGに対応したものは無いけど。面白いのはこれがlateralizeしていることで、VANは右にしか見つからない。いっぽうで、左側にlateralizeしたネットワークも同定されて、これはヒトでのlanguage networkに対応していて、しかもposterior STGとA44-45あたりが出てくる。

マカクでVANが右にしかなくて、左には言語ネットワークがあるというのは、HO KarnathのperiSylvian networkが左右でVANと言語をやっているというのによく合致していて、とても面白い。

あと面白いなと思ったのは、ヒト-マカクの対応がついていない、ヒトだけのネットワーク、マカクだけのネットワークが見つかるのだけれども、ヒトだけのネットワークはVANでもなければ言語でもなくて、insula-ACC、つまりサリエンシー・ネットワークだった!

これをみたとき、やっぱりマカクでの統合失調症動物モデルは無理、とまでは言わないまでもサリエンシー・ネットワークの結合は強くはなくって、なんらか原始的な対応物を見つける、という方向で考えたほうが良いのなかなと思った。

解析方法にはいくつか恣意的なところが見つかるのでそのまま信じるのはよろしくないが、これを元にしてどんどん「直接的な」検証をしていけばよいのだから、そのためにはかなり使えると思う。

「解析方法にはいくつか恣意的なところ」というのは、ヒト-マカクでの対応を付けるためにfMRIシグナルの時間相関を計算してdendrogramを作るのだけれども、どこで閾値を設定するかが「ヒト-マカクの対が最大になるように」決めてた。というわけでここはデータ駆動型になってない。


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