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■ 瞑想と神経現象学

"Long-term meditators self-induce high-amplitude gamma synchrony during mental practice." Antoine Lutz, Lawrence L. Greischar, Nancy B. Rawlings, Matthieu Ricard and Richard J. Davidson。Antoine Lutzは故Francisco J. Varela@CNRSのところでPNAS '02 "Guiding the study of brain dynamics by using first-person data: Synchrony patterns correlate with ongoing conscious states during a simple visual task."を出した人。現在はUniversity of Wisconsinだそうです。あれはほんとうにneurophenomenologyといえるような代物なのか、ってのが今でも気にかかっているのですが、その基準で言えば今回のもそうなはずで、あれをさらに推し進めたものとなっているはずです。今回はトレーニングを積んだ素人(PNAS '02)ではなくて現象学的分析をまさに日々実践しているチベット仏教の僧たち(ニンマ派とカギュ派)が瞑想時にガンマオシレーションを出しつづけることができるというのが内容です。こう書いてしまうと昔からある「ネタ系」と同じでしかないなあ。
ただこれが脳領域間でのphase synchronyであることから、以前のNature '99("Perception's shadow: long-distance synchronization of human brain activity.")や前述のPNAS '02と併せて考えるべきです。Nature '99で重要なところは、認知の起こっているところで脳領域間でのphase synchronyが起こっているだけでなく、そのあとに強烈にdesynchronizationが起こっていることです。
そういう認知の切り替わりみたいなものが僧たちでどういうふうになっているか、ということからどのくらいのことが得られるか、それがneurophenomenologyという研究プログラムがどのくらい意味のあるものであるかを占うことにもなります。つまり、neurophenomenologyにある「現象学的分析は単なる内観主義ではない」「現象学的還元や不変項の発見などを通した厳密な吟味によって経験に直接根ざした明示的なtermとして現象的なtermが立ち上がってくる」というような言葉が想定している厳密さ、突き詰め度がこの研究論文あるかどうかを見ておきたいのです。Varelaの瞑想経験やチベット仏教への入れ込みは単なる東洋趣味ではなくて、三人称的世界と一人称的世界とを橋渡しするときに必要な厳密な現象学を実践しているがゆえだったのですから。
こういうことを最近まったく書いてないなあ、いかんいかん。もう少し読んで、もう少し書いていきましょう。


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