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■ 大学院講義の反省文

を書きます。アウトラインとしては以前書いた20041127を基本にいくつか手を入れてこんな感じになりました。

  • Part 1 記憶の分類
    • 教科書的な分類
      • Squireの「記憶と脳」
    • 内側側頭葉についての解剖学
      • human
      • nonhuman primate
    • ヒトの臨床例の神経心理学に基づいて分類を見直す
      • 患者H.M.とE.P.による宣言的記憶と手続き記憶
      • 患者K.C.とA.Mによるエピソード記憶と意味記憶
      • 再認記憶課題のrememberとknow
  • Part 2 宣言的記憶の動物モデル
    • nonhuman primateでのlesion study
      • 再認記憶課題
      • 対連合記憶課題
    • nonhuman primateを使った対連合記憶課題での単一ニューロン活動記録
      • 宣言的記憶を支える連合関係をコードするニューロン
      • 視覚連合野から内側側頭葉記憶システムへの向きの情報処理(encoding)
      • 内側側頭葉記憶システムから視覚連合野への向きの情報処理(recall)
  • Part 3 エピソード記憶の動物モデル
    • 行動に基づいた操作的な定義
      • Episodic-like memory: ハトが「いつ、どこで、なにを」の情報を保持する
    • ヒトでの知見との平行関係
      • Recollection-like component: ラットが再認課題でfamiliarityではなくてrecollectionを使っている?
  • Part 4 ヒトでの知見と動物での知見との相互規定

Part 1のメインは症例報告で、ここはなかなか楽しんでもらえたのではないでしょうか。かなり具体的な話もできたし。本職の人がいたらツッコまれまくりだったでしょうけど、ここ数日私自身が論文を漁り読んで面白いなあと思った感じも伝わったのではないかと。エピソード記憶と意味記憶との間の不思議な関係、とくに自伝的記憶の中のエピソード記憶的成分と意味記憶的成分(personal semantic knowledge)との間の微妙な関係に質問が集まったと思います。

準備の順番が適切でなかったのでH.M.さんに関する原著を充分読むことができなかったことが悔やまれます。'68のMilner論文、それからとくに、"記憶の亡霊―なぜヘンリー・Mの記憶は消えたのか" 記憶の亡霊―なぜヘンリー・Mの記憶は消えたのかを読んでいかなかったあたりで。

また、記憶に関する心理学(Tulvingの符号化特定性、Collins and Qullianの反応時間課題、semantic priming)あたりに関してはまったく触れられませんでしたが、さすがに全部は無理でしょう。Human fMRIの知見をまとめるのとあわせてどっかで一回総ざらいしておこうと思います。

ここまでで1時間.5分休みを取って後半戦ですが、こちらは駆け足になってしまって大変悔いの残る出来でした。実際問題、part 2だけで1時間使って話す話題なのですが、私としてはpart 3の方が話したいことだったのでむりやり詰め込んでしまった次第。伝えるべきことではなくて伝えたいことを優先してしまったところがあることは認めます(でも、今ホットなのはpart 3のほうだと思うのですが)。

Part 3に関してはアメリカカケスの話は枠組み(what-where-when)と実験パラダイム(どうやってwhat-where-whenを課題に組み込むか)だけ説明できれば充分な話なのでよいのですが、Eichenbaumの方は厳しいものがありました。Signal detection theoryの解説をしないとROCカーブの形の意味が説明できないにもかかわらずそこをすっ飛ばして、ヒトでもラットでも海馬の損傷によってROCカーブが非対照的なものから対照的なものになり、ヒトでは海馬損傷によってrecollectionの成分が選択的に障害を受ける、だからラットでも海馬損傷によってrecollection-likeな成分が落ちるのだ、というロジックをどう批判的に紹介すればいいか、ほとんど無理でした。ここがボロボロなので、part 3で計画していた「行動に基づいた操作的定義」と「ヒトでの現象学的報告(rememberとknow)をモデル化してそれと平行なものを見つける」という二つの関係をもっと明確にすること(充分議論するに値するほどの話題提供)ができませんでした。これに関してはリベンジというかまた別に語る機会はあることでしょう。この問題は意識と脳の活動とをつなぐlinking hypothesisに関する問題であり、脳高次機能を脳の活動とつなぐ際に必ず出現する問題なのですから。

とまた気が先に行ってますが、もう少し基本的なこととして、参加者ときっちりあいコンタクトを取って話すこと(とくに、一ヶ所にかためずにある程度散らしてゆく)、実際に記憶課題をやってもらうなど受身にならずに参加してもらえるところを入れること、などは気を付けてすこしはできたのではないかと。トークの最初に笑えるネタフリがあるとよかったのですが、そこはちょっと痛げな体験談などを交えたぶっちゃけ気味トークで代用しました。あと、このネタフリを使って最後の最後にちょっとしたギミックを--参加者の皆さんにもrememberとknowとを実感してもらうということで最後に入れてみましたが、これで多少わかせて終えるのに成功したでしょうか(ネタフリが講義のいちばん最初でまだ全員が席についていないような状態だったのが反省点)。

参加者は院生の方々と、関係ラボ(同じフロアとか上のフロアとか)のスタッフの方々。基本的には院生の方々に伝えるつもりで話をしました。同じ時間に神経回路形成とシナプス可塑性に関する研究会をやっていたということもあってあんまりvitroの人には来てもらえなかった感じはありますが、とりあえず座席は埋まりました。

Part 1についてはせっかくなので再構成して「web講義」にしてみようと思います。


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