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■ SFNレポート

ま、いろいろ見てきましたが、印象を:Neural prosthesis増えてます、fMRIが多くなったどころか、もはやsingle-unit studyを演題数で追い越してしまっている感じ、学会が大きくなりすぎでPosterを見る暇がない、後半バテた。以前は最終日が半日だったのが、初日が半日になるようになってました(去年かららしい)。これで最終日が寂れることを抑制できていたので効果的だったと思います。んで、予想するに、これは将来的に初日も全日にする布石だと思いますよ。たいへんだけど、そのほうがまだゆっくり見ていられるかも。
印象に残ったセッションについて、ラボでの報告会での資料作りを兼ねて作ってみましょう。今回、ああ、これはNatureかScience間違いなくいったな、と私が思った演題は二つありました。

  • 527.2 "RESPONSE OF NEURONS IN MACAQUE AREA LIP DURING A PROBABILISTIC CLASSIFICATION TASK" Shadlenラボ。タイトル見るとどうってことない感じなのだけれど、これは将来的には"neural correlate of arithmetic operation in macaque area LIP"とかそういう形で出てくることでしょう。簡単に言うと、nonhuman primateに足し算、引き算をさせると、その計算途中と計算結果に対応したニューロン活動がLIPから記録された、というもの。ま、数の表象があるんだから、計算の表象があってもおかしくないけど*1、タスクが凝ってて、いろんなimplicationがあって、すごい。
    詳しく言うと、こんな話:被験者は図形を四コ続けて見たあとで、左右のどちらかにサッケードすると報酬がもらえる。図形のレパートリーは12個ぐらいあって、それぞれの図形は左右のサッケードの報酬量の比の情報をもっている。たとえば、正方形が出ると左右の報酬量の比は1:4とか。だから正方形が出たら右にサッケードしたほうが被験者にとってはお得。これだけでもGlimcherがtrialのblock単位で報酬比を変えてたのをtrial単位にできるというだけでかなりナイスアイデアかつ、トレーニングが大変そうなのだけれど、1trialでこういう図形が連続して四種類出る。被験者は四つの図形それぞれで決められている報酬比の情報のlog likelihoodの和を計算してやっと左右どちらにサッケードしたほうがお得か決めることができる。たとえば、図形1が1:4、図形2が8:1、図形3が2:1、図形4が1:16だったとすると、それぞれのlog likelihood(log(左/右))はlog(1/4)、log(8/1)、log(2/1)、log(1/16)で、合計するとlog(1/4)なので、右にサッケードしたほうが1:4で得となる、というわけです。で、実際行動はそうなるし、個々の図形のlikelihood ratioを把握していることを示す行動データもあります。さらに、LIPから記録すると、四個の図形が順番に呈示されるたびに、evidenceが蓄積していって、ニューロンの発火頻度が図形ごとに上下して、最終的にどちらにサッケードするかの最終決定を表す発火頻度になってサッケードする、というわけです。つまり、4つの図形が呈示されているあいだに関しては、完全にdecisionシグナルの蓄積過程(計算の途中経過)を表象していると言えて、その途中過程で左右どちらに行くかのdecisionの結果(右か左か)を二値的に表象しているわけではないことが非常に明確に示されているわけです。*2
    このタスクの徹底的さ加減もすばらしい。二つぐらい足せば充分じゃんとか考えてると足をすくわれるわけで、こういう徹底的さには心当たりがある。
    んでもってしかもいちばん最初に書いたように、これは足し算引き算のneural correlateであるとも言えるわけです。タイトルにもポスターにもそういうことはまったく謳っていなかったけれども(たぶんそう主張するには私が気付かないような障壁がいろいろあるのでしょう)、演者に聞いたらそうだと言ってました。その主張が文句なく通ればNature、文句ありでもScienceは間違いなく通ると見ましたが。
  • 646.2 "TWO-PHOTON CALCIUM IMAGING OF VISUAL CORTEX: ORIENTATION MAPS WITH SINGLE-CELL RESOLUTION" Clay Reidラボ。id:kkitaさんも11/1に書いてますが、これは間違いなくすごい。おめでとうございます。つづきは明日書きます、迷惑にならないように気を付けますので。

*1:しかしposterior parietal cortexは時間もあれば数もあれば計算もあればマッチングの法則もあればナッシュ均衡もあればmental rotationもあるわけで、ここは量:quantityの領野と名付けよう。ちなみにventral pathwayの連合野は質:qualityなわけ。
*2:トレーニングの過程では多分じょじょに図形の数を増やしていったのだから、行動のselectionの結果を表象しててもおかしくはなさそうなのだけれど、そういうのはFEFでやっているのでしょう。


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