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■ PLoS biology 10月号

"A Neuroeconomics Approach to Inferring Utility Functions in Sensorimotor Control." Daniel M. Wolpert。タイトルの"Neuroeconomics"が入ってきたという、いかにも流行に合わせてみました、という感じだけどどうか。
Daniel M. Wolpertはこれまで何度か出てきましたが、内部モデルの人です。運動を最適化させるような課題を人間の被験者に行わせて、それをモデル化するということをやってきたわけです。最近のNatureではベイジアン的な最適化が行われていることを示していました。今回はその課題をforced choiceにして、その選択が運動課題の二つのパラメータ(かかる力の最大値Fとduration T)によってどう変わるかの三次元プロットを作ってやりました。つまり、レバーを動かしてカーソルを移動させるタスクで途中でレバーに力がかかるようにします。二組のFとTの組み合わせでどちらが楽にカーソルを目標値に持っていくことができたか被験者に報告させます。この選択率からutility functionを計算してやります。 このプロットのパターンは被験者がF*Tを最小化している、またはFを最小化しているときに予想されるパターンとは異なっており、もっと非線形であるようだ、というのがこの論文の結論です。
二つのパラメータをふって選択をさせることによってeconomicsの応用と言える要素を導入しているわけです。mmrlさんの8/31のコメントからすると、Dorris and Glimcherの場合、二つのターゲットがあって、reward probabilityとreward量とをふってやって、どっちを選択するかを調べてやることでutility functionを計算してやって、indifference curve上でのutilityが等しい二条件でかつ行動選択率が違うような条件でLIPニューロンの活動を比較する、および行動選択率は同じだけれどuntilityが違うような二条件を比べてやった、ということになるのでしょう。繋げてみるとなんとなくわかってきた。Utilityは選択そのものによってdefineされ、valueはパラメータの掛け算によってdefineされる、と言えばよいか(<-読んでから言え、俺)。
なんにしろ、expected valueとexpected utilityの違いについてもうちょっと整理してみる必要があります。パスカルからベルヌイ。[ミクロ経済学での限界効用]と[フォンノイマンとモルゲンシュテルンのutility theory]と[カーネマンのprospect理論]との関係。調べてみました。これについては明日書きます。
ところでutility function(効用関数)の三次元プロットがあって、それのうちの同じutilityの点をつないだのがindifference curve(無差別曲線)なわけです。例えて言えば、地図は緯度と経度の二つのパラメータによってそこの標高が決まります。同様に二つのパラメータ(消費財)から効用が決まります。その地図で同じ色が塗られているところをつないだのが等高線です。同じ大きさの効用の場所の線をつないだのがindifference curveです。いわば「等効用線」ですよね。気圧の等高線のほうが毎日天気予報で見てるからイメージが湧くかもしんない。
しかし、この「無差別曲線」という広く使われているらしい日本語訳って変ですよねえ。だってindifferenceって「差がない」という意味ではなくて、"lack of interest"(無関心)なわけですから。"Involving no preference"とか"unbiased"とかの語義のほうが近いのだろうけど。中立線、なんてどうだろうか。そういえばindifferent electrodeの訳は不関電極で直訳っぽいけど、これはこれで意味がわかりませんな。難しい。


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