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■ Spatial hemineglectの原因部位
Spatial hemineglectは主に右半球のparietal cortexの損傷で起こり、左視野を無視するようになります。左半球の損傷の例は少なく、障害の程度も少ないことがわかっています(右脳左脳なんて言いますが、これこそが人間の脳の左右差を示す一番はっきりしたものであると言えます)。一番印象的なのは、時計の絵を患者さんに模写してもらうと右半分だけを書いた絵になる、というものでしょう。
んでもってその原因部位は右半球のparietal cortexのうちのIFG (inferior frontal gyrus)からTPJ(temporoparietal junction)のあたりということでだいたい考えられていたのですが(前述のJon DriverのNature Neuroscienceの図1を参照)、2001年になってUniversity of TübingenのHans-Otto KarnathがNatureに
"Spatial awareness is a function of the temporal not the posterior parietal lobe."
を出しました。Karnathはこれまでの研究ではneglectのある患者さんにはhemianopia (optic radiationの損傷による視野欠損:blindsightの原因になるやつです)も併発している例が多い(ある例では80%)ことに注目し、hemianopiaのない、純粋なneglectの患者さんのデータだけにしぼってその損傷部位を調べると、じつは一番頻繁に損傷が見られたのは前述のIPL、TPJではなくて、そのすぐventral側のSTG(superior temporal gyrus)であることがわかったというものです。しかも確認のため、neglectとhemianopiaの両方の症状がある患者さんの損傷部位を調べると、これまでの報告と同様、IPLとTPJでの損傷が多く見られたのです。損傷していた右のSTGの反対測、左のSTGはいわゆる言語野であって、そのためKarnathはnon-human primateとhumanとに分かれる進化の過程で左STGが言語野としての専門化することによって右STGが注意をつかさどる領域として専門化した、というspeculationをするのです。
一方、これはかなりcontrovercyを惹き起こしたようで、これに対する反論などがCortex誌上で行われたらしいのですが私のところからは読めません。その代わり、私が知るかぎりでは、NeuroReport '03において、
"The anatomy of neglect without hemianopia: a key role for parietal-frontal disconnection?"
という論文が出版されてます。ここで著者らは、KarnathのNature論文での損傷部位は急性期(出血などが起こった直後)のものを見ている点に注目して、慢性期に入った患者さんのうちでKarnath論文と同様、neglectのみがあってhemianopiaがない患者さんの損傷部位を調べました。すると一番頻繁に見られた損傷部位はKarnath論文のようなSTGではなくて、SMG(supramarginal gyrus、IPLの一部)だったのです。というわけで著者らはKarnath論文の結論は一部言い過ぎであり、気をつけて扱うべきである、としています。
一方で、KarnathはCerebral CortexのAOPにおいて、
"The Anatomy of Spatial Neglect based on Voxelwise Statistical Analysis: A Study of 140 Patients." Hans-Otto Karnath
というのを出版しており、140人の患者さんの損傷部位の解析から元のNature論文と同様な結論を導いています。なお、このCerebral Cortex論文はNeuroreport論文をreferしておらず、acute、chronicの問題には触れていなさそうです。
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- / 投稿日: 2004年07月19日
- / カテゴリー: [半側空間無視(Spatial hemineglect)]
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