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■ 次回の駒場の大学院集中講義 90min * 5 「意識の神経科学」の構想を練る
前回、前々回と6月20日の駒場広域システム学部講義 90min * 2 「意識と注意の脳内メカニズム」のレジメを作ってアップしてみました。
今度は冬学期に大学院の集中講義 90min * 5をやることになりました。広域システム科学特殊講義Ⅴ 「意識の神経科学」 1/10の3,4,5限 (13:00-18:00)、1/11の3,4限(13:00-16:20)です。 というわけで、構想をツイッターに書いたのをここにまとめてみる。(20120712バージョン)
教科書的に体系的に行くのにしてはそういうものもなかなか無いし(「意識の探求」から何章か選ぶとかはあり)、あんま不得意な部分をやるよりかは、自分の問題圏に沿って体系化するのにこの準備を使う方がよいだろう。
Anil Sethの「意識の神経科学」コースのアウトラインというのがあって、これは参考になる。
とりあえず前回まるまるはしょったのは、「意識と意志決定」の部分。つまり、信号検出理論をまったく出さないことにしたので、subjective thresholdとobjective thresholdとかそのへんの議論をまったくしていないし、ゆえにメタ認知とかの話もしてない。これとevidence accumulation的なアイデアとを合わせて、これで90min一コマまるまる必要。
Noe and Hurleyの議論(consciousness and gpasticity)の議論もけっきょくはしょって、次の日のラボトークに廻した。これは逆さ眼鏡、点字、TVSS、Surのフェレット、Ingleのカエル、それぞれ丁寧に説明したら90min一コマまるまる必要。
あと、Goodale and Milnerのdorsal-ventral説を、進化的側面から説明する。このためにはカエルでのvisionの話とかハトでの新しい経路と古い経路とか、比較解剖学的な説明を加えた上で、Goodale and Milnerにつなげる。G&Mだけでは浅い。
それから、implicit perceptionの話も完全にすっ飛ばしてる。Dehaeneのprimingとかあのあたり。でもこれはdirect measure/indirect measureって話と、exhaustive/exclusiveであるかみたいなMerikleの話とつなげて話した方がよいことでもあって、さっき書いたdecision/metacognitionの回とどう切り分けるか、ということを考える必要がある。
Predictive codingの話はほんのさわりだけだったから、もっと膨らます。Feature detector批判と、RGCとかいくつかの場所でのpredictive codingのempiricalな話をして、HohwyのBRの説明を持ってくるという感じ。
睡眠とかあのあたりはちと無理か。でも概論として、state of consciousness (VS, MCSを含む)くらいについては説明すべきか。でも概論を第一回に持ってゆくというのは退屈なものだから、焦点絞ってストーリー作る方がたぶん後に残るはず。
半側空間無視の話はほんとうは身体性とかagencyとか自由意志とかLibetの仕事とかあのへんとつなげてひとかたまりの話になるだろうけど、そこまで辿りつくかどうか心許ない。でもあんまりvisionに寄りすぎるのも本意ではない。そのへんはミルナー・グッデール回でやるべきか。
ということで、90min * 5が余裕で埋まってしまうことは想像が付いて、どう取捨選択して、どう弱い穴を埋めてゆくか、みたいなことを考えればよさそうだ。時期は1月なので、たまに思い出したときにでも少しずつ形にしていくことにする。
信号検出理論の説明というのはなかなか鬼門なので、それなりに準備してゆく必要がある。以前村上郁也さんが生理研に大学院講義に来たときに覗いたんだけど、なんかでGUIのスクリプト書いて、その場でd'が変わったらROC曲線はどう変わるか、閾値を動かしたらROC曲線のどこを動くか、ってのを実演していて、あれはいいと思った。
あと、ASCONE2007での私のレクチャーのときに現ブラウンの柴田さんがチューターとして、機械学習的な説明(これまでの経験から分布を作った上で、単回の刺激を分類する判別問題)をしてくれて、あれもいいと思った。
というわけで、このへんはパワポ書いておしまいってんではなくて、いろいろ仕掛けを作るべき。
Accumulator model系の話も、いつも論文にあるような図(ノイジーなdecisionシグナルが閾値に達して、分布が出来る)を書いておしまいだけど、あれもランダムウォークする過程を例示して繰り返しながらだんだんSRTの分布が出来るのとか実演したらけっこう印象深いはず。
まあ、だいたいこれまでの経験からすると、こうやって構想描いたことの半分も実現されないんだけど(もっと基本的な説明が必要であることが判明したりとかなんとか)、今回はそれでも直前にちょちょいと準備して終わりって分量ではないので、こうやってネタ帳つけておくこと自体は悪くないだろう。
GUIで実演ってMatlabでやるのがいちばん手っ取りばやいか。GUIDってじつはまったく使ったことがない。
TVSSをanimal modelでやって、plasticityの起こってる場所を追う、みたいなことを考えたことはあるけれど、触覚がどうも気に食わん、というより、Lomoが論文で出してくるニューロン活動が異常すぎて(視覚ニューロンの応答と違いすぎて)、なんか鬼門っぽい気がしてる。
Goodale and MilnerのDFさんの現象をanimal modelで再現する、というアイデアも前から温めているものの一つだけど、bilateral lesionする必要があるというところで躊躇している。二重感染法とかそのへんの方法論にうまく嵌るといいのだけれども。
そんなわけで、いままとめるとこんな感じだろうか(この予定は絶対変更あり):
- 意識とは何か、注意とは何か、概論、デモンストレーション。心の哲学、心理学による定義。気づきのneural correlate。
- 知覚と気づきを測る -- 信号検出理論、メタ認知、evidence accumulator model
- 注意の神経ネットワーク、半側空間無視、サリエンシーモデル、ベイジアンサプライズ、予想コード
- Implicit perception。二つの視覚システム仮説。
- 盲視。Enactive view of consciousness。可塑性と意識。
うーむ、ここまで全部しゃべれたら最高だが、それにこだわるよりは、かみ砕いてしゃべって、誰一人眠らせない、ということを目指したいと思う。あと三ヶ月か…
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- / 投稿日: 2012年10月13日
- / カテゴリー: [大学院講義「意識の神経科学」] [視覚的意識 (visual awareness)]
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