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■ Science

"Scale Errors Offer Evidence for a Perception-Action Dissociation Early in Life."
つづき。
実験としては、まず子供をプレイルームに連れてきて本物の滑り台や椅子や足漕ぎ車(中で漕いで進めるやつ)で遊ばせる。いったんプレイルームから子供を外に出して、また入ってきたときにはそれぞれのミニチュアと取り替えておく。それで子供がそのミニチュアを本物のように扱って遊ぶ回数をカウントする。結果、二歳ぐらいでこの数は最大となり、一歳半や二歳半では低くなるという、発達時によく見られる逆U字のパターンが見られた。(よく見られるのはU字パターンの方だったか。)
反論として、単に子供は遊びでまねっこでミニチュアの椅子に座る振りをしただけではないのか、という可能性があるが、この点について著者は押さえをしている。著者は子供たちが本気でその椅子に座ろうとしたのだという証拠として、(1) 遊びで振りをしている時には違った行動を取ること、たとえばミニチュアの滑り台だったらまねっこの時は手や人形を滑らせるのであって自分が滑ったりはしない、(2) 本物で遊ぶときと同じような手順を踏んでいること、たとえばおもちゃの車だったら、ちゃんとドアを開けてから足を入れようとするのであって、窓から足を突っ込んだりするようなことはせず、本物の足漕ぎ車のように扱っている、など説明している。
この逆U字型をどのくらい本物として捉えてよいか。著者は本物の(たとえば)椅子に触れている時間とミニチュアの椅子を本物のようにして遊ぶ回数とには相関がない(データは示されていないが)と書いている。しかし、子供の活動性、特にまんべんなくどのおもちゃにも触れているかどうか、などが影響すると思われるが、そのへんのデータはないようだ。(本物で遊ぶ時間に関しては条件を定めている。)
行動のplannningと行動のcontrolをventral pathwayとdorsal pathwayとに振り分けるというのははたしてどうだろうか。もちろん行動のplannningにはobjectのidentificationは要るだろうが、行動のplannningはpoesterior parietal cortexで、行動のcontrolはpremotor-motor-cerebellumでやっている、ぐらいでもいい気はする。ちょっと型に嵌めようと無理をしたという印象がある。
ところでこういう方向で私が興味あるのは毎度のことながら、はたして子供にはいつからconsciousnessが発生するのだろうか、という問題だ。もし、著者が言うようにventral pathwayとdorsal pathwayの協調がこのころうまく行ってないのであれば、視覚に基づいた行動には視覚的意識は伴っていないのかもしれないのだ。私たちには生まれたばかりの頃の記憶がない。このことはそのころエピソード記憶システムがなかったせいというのももちろんあるが、もしかしたらまだその頃エピソードとして蓄えられるような意識を持っていなかったのかもしれないのだ。これは昨日やった話みたいなもんで、どうやって記憶と意識とを分離するか、という問題だったりする。そしてconsolidationとretrievalとの違いとは別の分けがたさというのがhard problemへの道……

コメントする (2)
# NHK

直観でしかないのですがreality monitoringの発達とも関係があるのでは

# pooneil

NHKさん、ありがとうございます。今回のScale errorの方についてか、子供の意識の発生についてかちょっとわかりませんでしたが、後者の方かなと推測して書いてみました。前者なら、本物のおもちゃを遊んだという記憶に付随するcharacteristicsが充分保持できていない、というようなことになるのかもしれません。


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