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■ 夢

夢がただの幻覚でないのは自分が行動している、という感覚を持つことができているからで、まったくの受身なわけではないから。その意味で、想像(imagery)はトップダウンコントロールによる感覚系の活性化だけで説明がつくが、夢や幻覚にはある種手触り、触れたり移動させたりすることの可能性(=アフォーダンス)がある。つまり夢や幻覚には遠心性コピー(=内部モデル)が戻ってくることが必要。そして覚醒時の意識にはそれ以上のものが必要になる。つまり、遠心性コピーではない、本物のフィードバックがあることがたぶん不可欠なのだ。前に言ってた、想像―夢―幻覚―覚醒時の意識で起こっていることの違いがたぶんここにある。いわば、それぞれのレベルでカップリング(またはバインディング)の仕方が違う、と図式化することができる。
幻覚は覚醒時の意識と共存できるという意味で夢とは違うが、両者の現象学(カッコつけすぎ)は多くを共有している。
自分の行動が環境世界に変化を与える、それを感覚器が受容する、というループ(byユクスキュル)がたぶん現実を構成するのに必要なのであって、これこそがいわゆる身体性であり、「世界は現実にある、という実感」のことなのだ(飛ばしてきた!)。クオリアはこの実感(というのは語弊がある、アプリオリとでも言えばよいか)に大きく依存するが、夢や幻覚にもクオリアがあるように、両者は同一ではない。Sensorimotor coordinationのループと意識とは同一ではないが、このループが意識を可能にしている。
いやいや、夢にもある種の身体性はあるか……止まらなくなってきたのでここまでにしとく。

コメントする (4)
# がや

私にはわかるようなわからないような微妙な線だけど、上の考え方にはよく共感できる。もし書く時間があったら是非ここで止めないで続けて下さい。

# pooneil

サンクス。そのうち続けます。[Sensorimotorループ]と[意識]という別々のオートポイエティックなシステムがあって、その二つの輪が鎖のようにカップリングしている、というのが元イメージなのです。河本英夫氏にはきっぱりと否定されましたが。

# arational agent

pooneilさん、新年あけましておめでとうございます。初めてご挨拶申し上げます。私、マインツ大学哲学科にrational agencyを主題とする博士論文を年明けに提出いたしました。その執筆の過程でpooneilさんのサイトを日々読み、おおいに助けられました。大変感謝しております。この夢に関する議論やMilner&Goodaleのtwo visual systemsに関して、pooneilさんのご高論を参考にさせて頂きましたので、お名前(「pooneil」さんではなくご本名)を注で挙げてしまいましたが、ご了承頂けないでしょうか。(提出するまで、論文を提出できるかどうか確信が持てなかったため、ご連絡するかどうか躊躇しておりました。)事後承諾をお願いすることになってしまったこと、ご容赦下さいますようひらにお願い申し上げます。pooneilさんのサイトからの助けがなければ、博論をいまだ完成できなかったと思います。誠にどうもありがとうございました。

# pooneil

はじめまして。Rational agencyで哲学科に博士論文で、Milner and Goodaleも関わってくる、とはおもしろそうな話ではないですか。Rational agencyじたいはAIの分野での議論ですよね。どんなストーリーなのだか興味があるので、紹介してもらえませんか。たぶん、論文自体はドイツ語ですよね。直メールででも、コメント欄への書き込みでもけっこうですので、解説していただけるようでしたら、このサイトで紹介させていただきたいと思います。
承諾の方はなにも問題ございません。事実と反していないかどうかは確認しておいた方がよいかもしれませんが。
ご存じのとおり、Milner and Goodaleの議論は心の哲学ではいろいろな人に採りあげられている話題だと思います(すぐ思いつくところでAndy ClarkやAlva Noë)。このへんの話をすることが出来たら、とてもうれしいです。
あと、ここだと目立たないので、現在のトップページにもこのコメントを貼り付けておきました。


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