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■ 「統計学を哲学する」(大塚淳著)を読んだ

(注記: 以下はツイートをまとめただけなので断片的。)

「統計学を哲学する」(大塚淳著)を2章の最後まで駆け足で読み進めた。すげー面白い!内在主義的な基礎付け主義の話、JaynesのMaxEntとも繋がりそう。Gelman Shalizi 2013およびそのコメンタリも読みたい。ともあれまずは明日中に最後まで読み切っておきたい。

統計的推定における自然種(Natural kind)としての統計モデル(正規分布とか二項分布とか)を科学における目的に応じた世界の分節化によって説明とか、確率モデル(=大数の法則とiidから措定される「真の分布」)の実在と、道具としての統計モデルの関係(対象実在論)とかも、やっと納得いった。

クワインの認識論的全体論の話も出てきたけど、なるほど、この話が「現象学的明証論と統計学」(田口、西郷、大塚)における、真の分布-推定パラメーター-観測値が互いに依存しあっている構造と繋がるのだなとか。私の頭のシナプスがガンガン繋ぎ変えられてる感じ。

確率モデルの「実在」も、ヒュームまで戻ったら統計的推測できないでしょっていうプラグマティックな視点だったので納得いった。戸田山本では、科学者が無自覚に前提としている素朴実在論を擁護する、みたいな形而上学的な実在と(私には)読めたので、納得できなかった。(<-読み終えてないのに語りすぎ)


「統計学を哲学する」(大塚淳著)、最後まで読み終えた。すごくいい本だった。それぞれの章で統計について最小限の数式での説明をした上でその哲学的含意を語り、を繰り返して、最終章でもういちど哲学的含意の部分をつないで説明し直す、ここまでやってトータル229ページでコンパクトにおさめてる。

自分的には最終章もっと深くやってほしいとか、頻度主義が外在主義的認識論でベイズが内在主義的って単純化し過ぎだよなとか思ったが、このあたりは最後の最後(p.228-229)でフォローがあった。

あと、4章のAIC部分についてはすごく期待していたのだけど、ずいぶんあっさりとしたという印象。あまり既存の研究が引かれてなかったので、統計学の哲学としても著作の数がそもそも2,3章と比べて少ないのだろうと思った。ここの部分については「科学と証拠」(ソーバー)を読み直してみようと思った。

5章の因果推論の部分はすごく充実していて、因果とは因果グラフではなくて、実在世界と可能世界との間をつなぐ介入のレベルにある、とかスゲー満足した(<-言い方!) 因果推論については著者の「哲学者のためのベイジアンネットワーク入門」とかでもお世話になった。

というわけで、またこの本をゆっくり読み直したり、「科学と証拠」「科学とモデル―シミュレーションの哲学」「科学的実在論を擁護する」とか途中で積んであるものに戻る手がかりにしたりとかしていく予定。

あと、この本で書かれていた認識論的、意味論的な問題というのは、いま私がやろうとしている、自由エネルギー原理をエナクティヴィズム的に見直すプロジェクトを、その外側から批判し鍛えるのにも使えそう。FEPにおける反実仮想って、Pearl的な反実仮想になってないよね、って話をしたことがあるけど(Granger因果性的な因果しかない)、やはりここは肝だなと思った。


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