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■ ガヤScience article論文

4/27の「ん?」さんへのコメントからつづき。発表直前にガヤとメールのやり取りをして出たきた論点を踏まえて。

  1. 同期発火でない、時間遅れのあるsequence自体を最初に報告したのはMao BQのNeuron論文であるようで、厳密にはnew findingではないらしい。もちろんそれを使ってここまでガンガンに解析してその実在性を示したのはこの論文が初めてで、新規性に関しての問題はまったくないけれど。
  2. また、fig3とfig4cについて、これはたいへん微妙であると思う。Fig4cのsongはfig5でやっているようなregression analysisに乗せると、おそらくthetaは37degくらいになる。Fig5cにあるように、thetaが37degあたりのsongが検出される数はsurrogateデータと変わらず、有意ではない。またさらに言えば、fig5cを見ると、thetaをcollapseしたtotalでのsongの数はchance levelと変わらない。Thetaによるsongの数の分布がreal dataでは均等でない(fig5c)、regressionの残差がreal dataの方がより低い(fig5d)、ということに関してのみ有意性をテキストは主張している。このことからすると、fig4cのデータの鮮やかさに圧倒されてしまうのだけれど、実はfig4cのような繰り返しパターンがrandomな分布から得られる可能性があるのかもしれない。これは4/24の日記の最後のパラグラフで書いたことにつながる:おそらくfigS7のようにではなくて、ISIシャッフルして作ったcortical songのsurrogateデータはreal dataよりも少ないだろう。しかしこれはsequenceの数とsongの数とにcorrelationがあって、シャッフルして作ったsequenceの数が少ないことからして充分なcontrolとなりえていない。この問題を解消して、(detectされたsequenceからではなくて、)シャッフルした活動から作られたsongのsurrogateデータを作ることができれば、本当にfig4cのような繰り返しパターンがrandomな分布から得られるかどうかを検証できるのだろう。(たぶん、あるべき帰無仮説H0はランダムな活動の列からsongが出来ることであって、detectされたsequenceをランダマイズしてsongが出来ることではない。)
こういう二段階の検定(sequenceとsong)が持つ問題はmultiple comparisonと並んで一般的に起こりうる問題なので、どっかで誰かが扱っているような気もする。たとえば、メタアナリシスの研究あたりでは、個々の研究の解析をまとめてなんらかの結果を出さなければならないため、多段階での解析が同じように問題になるはずだし。どっかで方法論が研究されているはず。Biometricsあたりの雑誌とかにないかな。

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# ガヤ

上記の点2はすべて同意(&正解)です。今回の論文ではいかんともしがたかった、というより良い方法が思い付かなかったけれど(最後に指摘してくれている点はベターな方法ですね)、いずれ対処しなければいけない問題です。sequence自体については最近でた総説NatNeurosci7(2004)456の「Spike Pattern Classification Methods」の項にも同様な指摘ありますが、ただ、これが2段階になると数学的アーティファクトの危険性は格段にあがるわけです。また、今のところ誰も指摘していませんがシンクロの問題もやっかいで、シンクロによってrecruitable spikesの数がnonlinearに上昇するので、これによっても疑似sequence数が増加すると考えられます(Fig3Gでは意外ですが回避できません)。とりもなおさず「ん?」さんのlocal population modulationに直結する問題(この場合のlocalとはspatialな意味ではなくてsubsetという意味です)。だからcell assemblyの検出問題にもなってくるのです。これは時間窓を区切って「K means algorithm」でclassifyするのが良いかと今のところは思っています(まだ実行していません)。さらにもう一点挙げますと、Fig3Dがこの論文の真の最重要データになりまして、コレ故にPooneilさんがこれまで挙げて下さった“個々のsequenceに関する解析法”はすべて無意味化されてしまうくらいの影響力を持っています(この現象は次の論文のテーマの一つです)。ただ、これまでに挙げて下さった解析方法はそれ自体有意義なものばかりですので別の方向でぜひ活用させていただきたいと思っています。

# pooneil

Fig3Dか、うーむ。FfigS5にも入っていたし、なんか過剰な気はしたがそういうことか。これについてはJCのときに少し考えて説明したんだけれど、あるsequenceが繰り返されるのはある短いスパンでのみのことで、そのような繰り返しはどんどんドリフトしてゆく、つまりそのrepeating sequenceの出現は非定常的なもので、joint-PSTH的なanalysisには馴染まない、そういうこと? そういうglobalなcell assemblyの推移とでもいうか。たとえばなんかでcell asemblyを大まかに分類するとそれぞれのreactivationは/XXXX\のようなグラフになるとか? なんにしろ、コメントありがとう。


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