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FEP入門 afterthoughts

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FEP入門を書いたあとにいろいろ考えたことメモ。


FEP入門は「知覚と行動の統一」に絞ったけど、本当は「学習」の話を入れないと、まだ桶の中の脳から脱出できてない。知覚と行動は外界を推定しているだけなので、外界不要の間接知覚に見えてしまう。でもそんなことはなくて、生成モデルを作る段階(学習)で、外界の生成過程の結果が必須になってる。

学習を入れると、推測されるstateと学習されるパラメーターが厳密に分かれたものではなくて、速く変わるかゆっくり変わるかの違いであることもわかる。以前入れてもらっていた新学術での「スローダイナミクスがベイズ推定の事前分布になっている」はこの意味で重要。

ハーケンの秩序パラメーターも事前分布として捉えている記述があるだろうと思って調べてみた。Entropy 2016 "Information and Selforganization"が関係ありそうだがそうは書いてなかった。ハーケンらのアプローチが(フリストンのFEPを含む)ベイズ的なアプローチのalternativeであるという言い方だった。(htmlページがLeTeXレンダリングが凶悪に遅いので、PDFのほうをリンク)

そうして考えてみると、Alva Noeの感覚運動随伴性SMCが得意とするテーマが可塑性(逆さ眼鏡や開眼手術)だったことの意味もよく分かる。つまり生成モデルが完成した状態での脳の働きを見ようとすると、間接知覚的なもので充分にみえてしまうからだ。これが来歴が必須であるということの実体だと思う。

これでJakov HohwyによるFEPの間接知覚的解釈に対しては、学習を議論するべしという方針が立った。でもこれではまだAndy Clark的な隠れ認知主義者(notエナクティビスト)なので、そもそもその確率的な扱いをする際にどのようにして世界を分節してきたかという観点が必要。

Comment By @hiraiyasushi1 これって間接知覚ではそもそも学習を説明できないってことではなくて、間接知覚だと説明できない学習があるってことです?上ツイートの遅速の話は、論文で強調されてた因果的介入の話とまた別の根拠のように見えるんで、ちょっと混乱してます

Reply to @hiraiyasushi1 まず一般的な意味での「学習」は「繰り返し刺激への順応」のように生成モデルのアップデートを必要としないものもあるから、逆転させて「生成モデルのアップデート」のあるものを学習と呼ぶとして、生成モデルの一部だけをアップデートするのに外界との照合は必ずしも必要ない、しかし生成モデルとはそのような生成モデルのパーツ全ての掛け算のことを指すので、履歴として外界との照合がまったくない生成モデルはない。個別の学習が必ず外界の生成過程の結果との照合をしているわけではない。あとこれは憶測なのですが、外界との照合自体は知覚を通して行われるので、agentはそれが生成過程の結果なのか生成モデルの結果なのかは区別できないはず。これくらいが想像できるのですが、正確なところはちゃんと式を作って確認する必要があるだろうというのが今すぐに返答できるところです。

Comment By @hiraiyasushi1 ありがとうございます、まだ全部理解できてないかもしれませんが、ともかく哲学的な間接知覚説は学習できないとは考えもしないと思うので、この辺もし見えてきたら面白いと思います。もちろん生成モデルを介するのではない間接知覚説(純粋に受動的な表象説?)は別としても。

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