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研究メモ: 逆転スペクトル、PLIなど(20160731まで)

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以前逆転スペクトルが本当にありうるかという話で、L coneのあるべきところにM coneが、そしてM coneのあるべきところにL coneがある、という場合のことを書いたけど、これは実際にありうるのだろうか?

そもそも「L coneのあるべきところ」というのがどう定義されるかというと、L-MとL+Mを作るようにRGCと繋がっているということなのであって、生きている大人でいきなりこの交換が起こるようなSF的な話でなくて、生まれながらにしてそのような交換があったとしても、その差は生まれ得ないのではないだろうか?

という話は置いておいても、2色性色覚というのはL->M->(M->M ...)とある染色体に不等交叉が起こった場合という話。

では、二重に組み換えが起こって、M->L みたいな配列が起こる可能性はないだろうか? それならば 一回目の組み換えで L->L->M とM->M ができて、もう一回組み替えればM->Lができる? それともこんなかんじのdouble crossoverしか起こりえない?

(後日談:研究所でゲノムの専門家の人に聞いてみたら、M->L みたいな配列はできないだろうとのこと。)


サブクリニカルなものを反映した意識経験というものに興味があるのだけど、発言小町のこのスレッドでは異臭症の訴えが並んでいる。これらは蓄膿症でもないし、体臭でもないだろう。こういうのを解明したい。


「脳が壊れた」鈴木大介を買った。横浜へ行く新幹線で読む予定。これとか「壊れた脳 生存する知」とかから抜き書きして半側空間無視での空間への意識経験についてまとめようという狙い。

予想通り、「脳が壊れた」で半側空間無視についての絶妙な表現を見つけた。

この「ないことにしたい」という言い方ははじめて見た。病態失認は伴っていないからだろうか。


2016年神経科学大会初日のハイライトはKarl Zillesのpolarized light imaging。無染色切片を偏光レンズで撮影することでミエリンの向きを推定する。技術自体は100年以上前からあるものだが(Wiener, 1912)、それをヒト死後脳で高解像度でスキャンしてさらにその画像を元にDTIでいうfiber trackingの方法を使ってfiberの向きを推定する。

たとえばFrontiers 2016のFig.5とか見ると視交叉での線維の交差がきっちり推定できる。

karl Zillesの仕事としては2010年くらいからあったようだが、今回はじめて見て衝撃受けた。DTIとかで苦労して推定しているところを段違いの解像度で推定していて、ヒト海馬でのperforant pathを見つけたとか、どのネタもスゴい。

マカクでpostmortemでDTIとか計画していたけど、なんとかこういうテクと組み合わせられないもんかと思った。でも原理はシンプルだが、獲得する画像が膨大で、定量的なことができるようなものを構築するのは相当大変だってことは想像がつく。


今日の午前中はこれに参加:Symposium S3-F-1 Frontiers of consciousness studies in mice

シンポジウム終了。クリストフに質問しそびれた。質問を頭のなかで組みたてていたのだけどまとまらなかったので。端的に聞きたかったことは「そもそもmiceに意識はあるか?(なければ意識研究の題材にすることはできないでしょ)」というものだった。

でも頭のなかで質問を作っていたときは「Adam Kepecsのundertainty論文を紹介していたが、『メタ認知』という言葉は使っていなかった。マウスにメタ認知はあるか?Kepecs論文からそれは言えるか?もし無いのなら意識研究の題材になるのか?」みたいなことを言おうとしてた。

でもあとで考えるに、そんなややこしい言い方をせずとも、「マウスで意識があると推定できるような行動的および生理的な証拠はどのくらいあるか?」と聞けばよかったのだった。(<-すごく面倒くさいタイプ)

村山さんへの質問もかなりもにょっていたが、もっとシンプルに聞くならば「体性感覚へのトップダウン入力の効果を見るならS2からの入力を見るのがstraightforwardだと思うのになぜM2なのですか?」と聞けばすっきりしてた。いつも質問しながら頭のなかをまとめているのでこうなる。


なんかの学会でポスター発表をしたときに、面識のない人がやってきて言いがかりっぽいコメントをして去っていこうとしたので、「すみませんが名前を教えていただけますか」と問うたが、結局そいつは名乗らず逃げていった。今にして思えば、ネットでのクソリプが現実にも実在するっていう例だな。

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