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■ 多次元脳トレーニング&レクチャーで「大脳の主要な神経束と神経心理的知見」の講師をしてきました

多次元脳トレーニング&レクチャー「ヒト、サル、ラットの脳解剖学から学習・認知の理解へ」で講師をやってきました。2年ぶり3回め。

この講義は毎年生理研の多次元共同脳科学推進センターで開催される実習とレクチャーの一週間コースの一部です。ラット、サル、ヒトの解剖学や神経生理学の基礎について、若手研究者(大学院生を含む)のうち特に学部でこれらの科目を学習する機会のなかった方を主なターゲットとして開催されてきました。以下はその時の準備のメモです。


多次元脳トレーニング&レクチャーの準備してる。2年前に使ったスライドがあるんだけど、見直してみたらいろいろ工夫したくなってきた。

前回は神経疾患として視覚失認、盲視、半側空間無視を説明して、後半にサルの連合神経束について整理するという構造だった。

今回は、さまざまな神経束とその離断による神経疾患(optic ataxia、視覚失認、盲視、半側空間無視)を縦糸に、ヒトとサルの相同を横糸にすることで解剖学の羅列にしないようにしてみようと再構成している。

Corbetta & Shulman Annu Rev Neurosci. 2011を読んできたので(以前のブログ記事参照)、前回よりかは半側空間無視における背側、腹側の話が明確になったように思う。(かえって謎が深まったとも言える。)

けっきょく、Thiebaut de Schotten M Science. 2005で見たようなawake craniotomyでのSLFIIへの微小電気刺激がbisection taskに影響を与えるというのは、無視症状の発現自体は背側経路ということで、一方で原因部位は腹側経路なのは腹側経路こそ左右のバランスが崩れる源だからで、背側経路の損傷自体ではそのような不均衡が起こらない。つまり、原因部位と症状の発現部位が違うというのがCorbetta & Shulmanの考えなのだ。

VanduffelのJNS (前回のブログ記事参照)を見て、nhpでもVANに左右差が出てきたりしないだろうかと興味が沸いてきた。

この機会にミラーニューロンシステムと言語システムの関係も調べてみたが、けっきょくKelly et.al. Eur J Neurosci. 2010を見た限り、nhpでのF5-PFはヒトでのTPJ-BA44と比べると一段短いというか背側寄りで、別もんと考えた方がよさそう。SLFIIIのうち短いサブセットということになるだろう。

では右側の対応物はなにになるか。HO KarnathのThe cognitive neurosciences IVの章を見て、左が言語、右が空間というのはけっこう説得された。


多次元レクチャーの方を考える。以前のブログ記事「視覚と注意と言語の3*2の背側腹側経路」で書いたことを元ネタにして話すのだけれども、ちょうど酒井邦嘉さんが前日に講義をされるので、言語についてはそちらを参照、ということで済むだろう。

酒井さんの後半のタイトルは「言語: 人間の最高次の脳機能」とのこと。ちょうどBrain論文2014が出たところなので、たぶんそのあたりの話になるのではないだろうか。プレスリリースはこちら

プレスリリースおよび本文を見たところ、背側(Arcuate Fasciculus)と腹側(Extreme Capsule, Uncinate Fascicuus)というような分類よりもさらに細かく、ネットワーク1,2,3という分け方になっている(Fig.8)。うーむ、これと整合性を付けて話をすることが必要そう。

Science 2005のレビューではウェルニッケ-ブローカ44, AG-ブローカ45と下中心前回、というような図(fig.2)は出てくるが、けっしてパラレルな図式とはなっていない。


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