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■ Nature 2/19

"Whisker movements evoked by stimulation of single pyramidal cells in rat motor cortex." BRECHT and SAKMANN @Max Planck Institute for Medical Research。
これがラボのjournal clubで採り上げられました。私が疑問に思って指摘したところについてはここで書いてもいいでしょう。
まず、single neuronへの刺激でそのニューロンにたった二個のspikeを引き起こしただけでヒゲが動いた(fig.4gより、二個のspikeでもゼロ個のスパイクのときよりは有意にヒゲが動いているニューロン刺激の例がある)、ということは非常に印象的であり、まずはこの結果を疑ってみる必要があるでしょう。
まずは刺激電極が刺しているニューロン以外を刺激している可能性はないでしょうか。この点について今回の実験だけからではまだ私は説得されませんが、とりあえずこういう実験をすればよい、というのはあります。つまり、ピペットにQX314を入れてwhole-cellにしているニューロンのspikeが発生しないようにするのです。これによって、刺激されているニューロンでのspike発生以外のアーティファクトの寄与を検証することが出来ます。しかし、著者はやっていないようです。そのうちそういう結果が出てくれば私もこの結果かなり信じられます。
たった二個のspikeからヒゲが動いてしまってよいものか。ニューロンには自発的な活動があるわけでして、そのような二個のスパークのバーストは自然に起こっています。だとしたら、そのニューロンの二個のspikeからなるバーストでもってヒゲの動きをspike-triggered averagingをしてやればそのニューロンのバーストに対応してヒゲが動くのが見られるかもしれません。これを示すことが出来たら、かなり彼らの結果は信頼性があると言えます。もっとも、自発的活動には時空間的構造があるわけで、あるニューロンでバーストが起こっているときにほかのニューロンも同期してバーストしていたりするような、whole-cellで刺激するときとは違った条件になっているかもしれません。この可能性があるので、まったくの保証があるわけでもありません。
以上の点について続報が出てきたあたりでこの論文の結果を信用することにしたいと思っております。
ついでに二つ:
ヒゲがリズミックに動いているかどうか。ヒゲが一回動いたら、ヒゲには弾力があるのだから、たんにヒゲの振れがそれで続いて減衰しているだけかもしれません。もちろんこれについてはヒゲを支配しているmotoneuronからの記録をして決着をつければいいだけです。
自発的なヒゲの動きがないようなデータばかり出していて、後になって(Fig.5c-e)から自発的なヒゲの動きのある場合(しかもこっちの方が多そう)を出してくるのは感じが悪い。
いろいろ文句をつけたけど、面白いのは間違いない。刺激されたニューロンとその周りで結合しているニューロンとがどのように活動してどのようにmotoneuronを活動させるか、イメージが膨らみます。


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