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■ ガヤScience article論文

4/24の「ん?」さんへのコメントからつづき。
Joint-PSTH的な扱いのつづき。Cell1,cell2,cell3があったとき、cell1の発火をreferenceにしてその時間遅れはt2,t3の二つで定義されるため、ふつうのjoint-PSTHよりも自由度が1減っている。t2,t3が負であることを許容すれば、cell1が最初に発火するsequenceのみに限定されないので三つのcellから可能なsequenceは(t2,t3)の平面ですべて捉えることができる。そうすると、cell1,cell2,cell3が時間遅れ(t2,t3)で発火するjoint probability P123(t2,t3)*1がたとえば、[cell1とcel2が時間遅れt2で発火する確率P12(t2,:)]と[cell1とcel3が時間遅れt3で発火する確率P13(:,t3)]との組み合わせよりも有意に高いことを示す必要があることがわかる*2。この視点はScience論文にはない。
そのうえで、multiple comparisonの補正をしなければならないことになる。ここでBonferroniを使うのは厳しすぎるだけでなく、おそらく間違っていて、fMRIのときのように補正した自由度を計算して対処する問題のようにも思う。もしくは、multiple comparisonを回避するために、次元を落としてしまう。たとえば、ランダマイズしたデータの(t2,t3)の平面上全体のデータをあわせて上位5%以上のcorrelationを持つものがreal dataでは30%あることを示す。こうすれば、real dataのどれが有意であるかは直接言えないが、(t2,t3)空間の分布が有意に片寄っていることは言えるだろう。この場合、t2,t3の範囲をどう区切るかでおそらく有意度が変わってくることになるが。


*1:t2とt3で積分すると1になる。
*2:もちろんcell1,2,3それぞれのfiring rateの組み合わせからも。おそらくこのへんでNakahara and Amari論文が関わってくるはず。

コメントする (4)
# ガヤ

お?これなかなか良い方法っすね。今のデータは記録時間が長いのでそういう解析も可能かと思います。あと、「ランダムで上位5%以上がreal dataでは30%ある」のような判断は先週もメールで個人的に話した「シンクロレベルの評価」の過程で、今回のScience論文でもやったのですが、でも検定に困りました(とういうわけで改訂時に削除)。ラボ内の研究報告会ではカイ検定で報告したのですが、それはちょっと違うように思うし。。。

# pooneil

コメントサンクス。日記での紹介もありがとう。記録時間が長くてもかなり難しそうに思う。というのはそのjoint-PSTHの各セルごとの事象の個数はほとんどがおそらく0か1なわけで、これが充分大きくならないと難しいように思う。Abeles JNP ’93を読んだときに、Table 1だったかで長いsequenceの繰り返しが一個見つかってきて、これの出現の期待値が0.04だから有意だ、つうのがあったけれど、どんなに期待値が小さくても、たった一個見つかったことを有意だと言うのはどっかおかしいと思った憶えがある。逆にsequenceの繰り返しがどのくらいの個数集められればよいかということから必要な記録時間が決まるかもしれない、とは言えるかも。
こうして書いてみてわかったけれど、一昨日から私が書いているのは個々のsequenceの有意度を検定しようとするということであって、Science論文ではどのsequenceが有意かは言えないけれどもsequenceの個数は有意に大きい、ということまでに留めている(synchronous firngの検定で使っているような「ランダムで上位5%以上がreal dataでは30%ある」も同じようなアプローチと言える)、と整理できる。ゆえに前者は後者への反論、というのとはちょっと違っているようだ。Science論文の解析の不充分さを突くつもりだったのだけれども、意図せずより先に進んだ解析を提案している、という形になったようだ。

# ん?

先日の続きです。先日はlocal population modulationと書きましたが、Fig.4などを見ると、必ずしも局在しているわけではないので、幾何学的な制約は外して、cell assemblyと呼んだ方がいいのでしょう。Fig. 3から、同期発火で定義されるようなcell assemblyが存在して、それはCossart et al. (2003)でも示されていたが、imagingの時間分解能をあげることによって、その同期発火は、ある有限の時間幅を持った現象であることがわかった、ということは言えていると思います。問題は、このcell assemblyの(時間幅のある)同期発火の中で、さらに特定のsequenceが他のsequencesより有意に多く発生しているかということをどうやって示したらいいかということかと思います。これを示すのに、吉田さんのコメントにありますように、実際に発生しているsequencesの分布がcell assembly内のrandomな分布から予想されるものより有意に偏っていることを示すか、特定のsequenceがcell assembly内の他のsequencesよりも有意に多く発生していることを示すかの二つの方法があるかと思います。前者のほうが(後者より)有意に出易いのでしょうが、cell assemblyというものをはっきりと定義することはおそらく難しく(Schnitzer & Meister 2003のように一つのcellが複数のcell assemblyに属していたりするでしょうから)、実際にこちらを実行するのは難しいかと思われます。後者の方法では、必ずしもcell assemblyを定義する必要がなく、例えば、あるsequenceの順と逆順の発生に有意差があるかどうかなどを検定するだけでいいのですが、実際問題としては吉田さんのコメントにもありますように長さ3以上のsequenceの有意度を検定するには膨大なデータが必要で、さらにmultiple comparisonsの問題も入ってくると実行不可能に近いのではないかと思われます。筆者らは、上記のどちらでもない第3の道を行っていて、Fig. 4では、sequencesから構成される、より高次のsequenceの存在を示しています。確かに、Fig. 4Cのような繰り返しパターンがrandomな分布から得られるとは考えにくいと思います。従って、Fig.3はFig. 4と併せて評価されるべきなのでしょう。

# pooneil

コメントどうもありがとうございます。おおむね賛成です。二つほどコメントを。長くなりましたので、4/30の日記に書きました。


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